その一つとして電磁気と光との間に何にか関係があるという予想は、ファラデーが五年間休養している間に、段々と円熟して来た。
第 7 章
ファラデーは健康が回復すると、一八四五年には再び研究にかかり、八月三十日から電磁気と光との関係につきての実験をやり始めた。
まず電気分解をなしつつある液体の内に偏光を通して見たのであるが、この際、いかなる作用が起るかを予期しておったかは明かでない。
ただ手帳には、「長さ二十四インチ、幅一インチ、深さ一インチ半のガラス函を取り、この内に電解質の液体を入れ、電気分解をなしつつある間に、種々の条件の下に偏光を通じて試験をした。」と書いてあるのみである。
電極には白金を使い、液体には硫酸ソーダを用いたが、結果は出て来なかった。
そこで、液体をいろいろと変えて、十日間実験をつづけた。
その間に使ったのは蒸溜水、砂糖の溶液、稀硫酸、硫酸銅等であった。
それに電流も、偏光の進む方向に通したり、これに直角に通したり、なおこの電流も、直流を用いたり、交流を用いたりしたが、それにも関わらず、少しも結果が出なかった。
そこで実験の方法を変えて、固体の絶縁物をとり、静電気の作用の下に置いて、この内を通る光に何にか変化が起るかと調べ出した。
最初にやったのは、四角なガラスの向い合った両面に金属の薄片を貼りつけ、発電機の電極につなぐと、ガラスの内部を通る偏光に、何にか変化が起るかと調べたのであるが、やはり変化は見えなかった。
それからガラスの代りに、水晶、氷洲石、重ガラスを用い、またタルペンチン、空気等も用いて見、なお偏光も電気力の方向に送ったり、これに直角に送ったりした。
さらに静電気のみならず、電流にして速い交流も使っても見た。
しかし、いずれの場合にも作用は少しも無かった。
一七 磁気に働かるる光
そこで、電気力の代りに磁気力を用いたところ、今度は直ぐに成功した。
その道順は、「一八四五年九月十三日、「今日は磁気力で実験をやった。これを透明な種々の物体に、種々の方向に通し、同時に物体内を通した偏光をニコルで調べた。」 この種々の物体というのは、空気、フリントガラス、水晶、氷洲石で、朝から一つ一つ取りて試み、また磁石の極を変えたり、偏光を送り込むニコルの位置を変えたり、磁石をつくる電池を強くしたりしたが、どうしても作用が無い。
そこでファラデーは最後に重ガラスを取った。
これは以前、光学器械に用うるガラスの研究をしたときに作ったものである。
「重ガラスの一片、その大さは二インチおよび一・八インチ、厚さ〇・五インチ。鉛の硼硅酸塩。これで実験した。同じ磁極または反対の磁極を(偏光につきていう)両側に置きて、直流並びに交流で実験したが、結果は見えない。されど反対の磁極を一方の側に置いて実験したら、偏光に作用した。これによって、磁気力と光とは互に働き合うことを知り得た。これは非常に有望のことで、自然界の力の研究に大なる価値があるだろう。」と書いた。
それから四日間休み、その間にもっと強い磁石を他から借りて来た。
これで実験したところ、著しく作用が現われた。
かつ磁石の作用は偏りの面を一定の角だけ廻転さすので、この角は磁気力の強さにより、また磁気力の生ずる電流の方向によることも発見した。
そこで、前に成功しなかった種々の物体を取って再び試みたところ、どれもこれも好成績を示した。
十月三日には、磁場に置いてある金属の表面から反射する光につきて実験し、鋼鉄の釦ではその面から反射する光の偏りの面が廻転するようであった。
しかし、この釦の面はごく平かでないので、結果も確実とは言えなかった。
磁場に置いてある金属の面で光が反射する場合に、偏りの面の廻転することは、後にケルが確かめた。
ケルの効果と呼ばれるのがそれである。
十月六日には、ガラス瓶に液体を入れ、これを磁場に置いて、何にか機械的または磁気的作用が起りはせぬかを調べたが、これも駄目であった。
次にファラデーは、磁気が光に作用するからには、反対に光から磁気を生じ得るのではあるまいかと考えた。
十月十四日は幸いに太陽が強く輝いておったので、この実験を試みた。
コイルに作った針金を電流計につないで置き、コイルの軸の方向に太陽の光を導き入れたので、初めにはコイルの外面を葢うて内面のみに日光をあて、次には内面を葢うて外面にのみ日光をあてた。
いずれも結果は出て来なかった。
それからコイルの内に磁気を全く帯びない鋼鉄の棒を入れ、これを日光にさらしつつ廻して見たが、やはり結果は無かった。
ファラデーがかようにいろいろとやっても見つからなかった作用も、後には器械が精密になったので、段々と見つかった。