その一部を匙に入れてローソクの上で熱し蒸気を火のついた芯にちかづけても火がつかないようになるまで、その蒸留酒からアルコールを除くことができる。このようにして得られた残渣は、真のフランスのブランディだったらブドウの香りを持ち、ブランディの元来の香りに似ているが、この混ぜ物ブランディの残渣はジンまたはいつでも酔っ払ってる人の息に似た特別な不愉快な臭いをしている。
第 1 章
アラックはラムに木酢液と安息香(*Styraxbenzoinの樹脂)の花(酸)を加えることによって、大まかに似せることができる。
しかし、このように作ったものは良くないものに違いない。
非常に有名な料理書の著者は「インチキ・アラック」を作るには2スクループル(*薬量単位:約1.3g)の安息香酸を1クォートのラム酒に溶かすように指導している。
麦芽蒸留酒=ジン
モルト蒸留酒すなわちジンは下層階級の人たちが好む蒸留酒であり、ビャクシン・ベリーの上に初めのうちの酒精が蒸留されたことが特徴であり、ふつうモルトと大麦の混ぜたものから得られる。
ときに穀物の入手が容易で無い時に、モラセスと小麦の使われることがある。
しかしウィスキーの香りは大麦とエンバクからなっていて、モルトはピート(泥炭)で乾燥され、ピートの煙はウィスキーに特徴ある味を与える。
モルト蒸留者は7パーセント以上オーヴァー・プルーフの未加工、未精製の酒精をジンの精留業者、製造者に売ると重い罰を受ける。
モルト蒸留者から酒精を受け取った精留業者は蒸留酒に糖その他の物質を入れるとかなりの罰を受けるし、次の法律が明らかに示すように顧客にある強さの酒精を送り出すことは許されない。
「精留業者または調合業者は、1イン5・アンダー・比重計・プルーフより強い、ブリティッシュ・ブランディ、ブリティッシュ・精留・蒸留酒、ブリティッシュ・調合酒、その他のブリティッシュ酒精、を売ったり送り出してはいけない。もしも1イン5・アンダー・比重計・プルーフより強い如何なるこのような酒精を売ったり送り出したりしたならば、これらの酒精はそれの入った樽や容器とともに没収され、間接税務局のいずれかの役人によって押収されるであろう。彼はそれとともに、国王の法務総裁またはそのために告訴する人の表決によって、その酒精の価値の3倍または50ポンドを没収されるであろう。そのような酒精の個々の価値はロンドンの最高価格によって見積もられることになる。」 小売されているジンを調べてみると、この蒸留酒を水で薄め糖で甘みをつけるのがディーラーのあいだで常習になっていることが判る。
この不正はこの蒸留酒を匙に入れロウソクの上で乾かすとすぐに判る。
このようにすると、酒精は蒸発し糖はガムのような物質の形ですぐに判る。
卸売の製造業者から買った120ガロンの真正のジンをふつう不正小売業者は14ガロンの水と26ポンドの糖を加えて商品にする。
このように希釈すると蒸留酒は濁りをしょうずる。
溶液中のビャクシン油その他の芳香性の物質が水によて沈殿し、その結果として蒸留酒は乳白色になる。
このように希釈した蒸留酒は沈殿して容易に再び透明になることはない。
この蒸留酒を透明にするために幾つかの試みがなされた。
そのうちのあるものは無害であったが、あるもののは蒸留酒を有毒にするので犯罪的であった。
偽物作りの方法のうちの1つで無害なのは、弱くした蒸留酒にまず水に溶かしたミョウバンの一定量を加え、次いで重炭酸カリウム溶液を加える方法である。
全体を一緒にして攪拌し、24時間のあいだ動かさずに放置する。
沈殿したミョウバンは重炭酸カリウムの機能によって乳濁した蒸留酒にたいして濾過器として作用し、細かくなった油性のものを降下させて、青色の薄められた蒸留酒を作る。
蒸留酒を透明にするには、他のものを加えないで、ローチすなわちローマ・ミョウバンも使うことができる。
「甘みを加えていないジンを弱くする方法」タン(酒の容量単位:良質のジン252gal)に水を36gal加えて総量を288galにする。
次いでザ・ドクター(水19gal)(前記のミョウバンと重炭酸カリウムのことか?
訳者)を加えて総量が307galになる。
これが終わると、1ポンドのミョウバンにちょうど水がかぶるようにし、沸騰させて溶かす。
全体をよく掻き混ぜ、ミョウバンを流し込むと、全体は数時間で透明になる。
「甘みを加えたブリティッシュ・ジンの作り方」「蒸留業者から空の樽を入手する。133ガロンの容量があるだろう。次に精留業者がふつうに売る強さの透明な酒精120ガロンを樽に入れる。
「次に1/4オンスの硫酸、半オンスのアーモンド油、1/4オンスのテレビン油、1オンスのビャクシン油、半パイントのワイン酒精、および半ポンドの砂糖をとる。上記のものを乳鉢で打ったりこすったりする。よく互いにこすったら、1ガロンのバラ水を入れ、全体を桶または樽の中で棒を使ってすべてが溶けるまで混ぜる。次いで上記のものに、雨水またはテムズ川の水または沸騰させた水9ガロンに溶かした25ポンドの砂糖を入れ、133ガロンの樽の中で棒で注意深くかき混ぜる。
「これを沈殿させるには3クォートの水に溶かしたミョウバン8オンスと45分煮沸する。火から外し6から7オンスの酒石酸塩を少しづつ溶かす。これがミルクの暖かさのときに、ジンに注ぎ前と同じように5分ほど、ビールを透明にするときと同じようによく掻き混ぜる。ジンを取り出そうとするときには樽をに立てる。甘みを再びつけようとするときには樽をよく洗い、取り出そうとするときには絶えず振るように注意をする。」 蒸留酒を透明にするもう1つの方法は先ず塩基性酢酸鉛溶液を加え、次にミョウバン溶液を加える。
この操作はきわめて危険である。
一部は硫酸鉛となり、蒸留酒に溶けていて有毒物であるのが理由である。
不幸なことに蒸留酒を透明にするこの方法は前に述べた透明化方法よりもしばしば行われていると思う理由がある。
この反応はずっと速いからであり、蒸留酒の屈折率を高くし、優れた外見を与える。
従ってしばしばモルト蒸留酒に鉛の痕跡が見つかる。
弱くなった酒精は次に糖で甘みをつけ、そしてモルト酒精の粗い味をカバーするために、グレインズ・オヴ・パラダイス、ギニア・ペッパー、トウガラシ、その他のピリッとし芳香性の物質で贋の強さを与える。
蒸留酒中の鉛の検出法
前に述べたように蒸留酒の中に鉛の存在を検出することができるであろう。
シュラブと呼ばれる強壮剤はしばしば銅の緑青の存在を示す。
この汚染は偶然的なものであって、この蒸留酒の製造に使っている金属容器に由来すると私は伝えられた。
種々な蒸留酒中のアルコール量を確かめる方法
どの蒸留酒中に存在する実際のアルコールも単純に蒸留するだけで容易に確かめることができる。
アルコールは蒸留によって蒸留酒の中に入っている水および他の物から分離される。
一定量のブランディ、ラム、またはジンをその容量の約1/4容量の水で希釈し、大きい受容器をつけたレトルトに入れ、弱い火で蒸留する。
最も強いアルコールは最初に受容器に蒸留されるが、段々と得られた産物の強さは減少し、最後には水の含量が多くなって匙に入れてローソクの上に置いても火のついた灯心に近づけても燃え出さないようになる(160ページ参照)。
この過程を続けると蒸留された産物はミルク状になり、香りは殆ど酒精のようではなくなり酸っぱくなる。
こうなると蒸留作業を終えるとよいだろう。
もしも最初の4容または3容の蒸留液を別にとっておくと、これは中程度に強いアルコールであり、残りはもっと希釈されたものである。
もしも全体の蒸留された酒精を完全に乾かした重炭酸カリウムと攪拌すると161ページに述べたようにアルコールはカリウム溶液の上に浮かび、はっきりした2層に分離するであろう。
もしもここで注ぎ出したアルコールを非常に弱い火で注意深く少量の乾いた生石灰か塩化カルシウムの上に再蒸留すると、華氏60度(摂氏15度)で比重が0.825の極めて純粋なものが得られる(*100%アルコールなら比重は0.795)。
その香りはそれが得られた蒸留酒の種類によって異なるであろう。
種々な蒸留酒内のアルコール・パーセントを示す表
ブランディー、ラム、スコッチ・ウィスキー、アイルランド・ウィスキー、アラック(バタビア)、ダッチ・ジュネーヴァ、ジン[以下略]
有毒なチーズとその検出法
グロスター・チーズが鉛丹(四酸化三鉛)で汚染されている幾つかの例があり、胃に入って激しい結果を起こしている幾つかの例に気がついた。
私が調べた1つの例ではチーズに色をつけるためのアノット(Anotto:赤色色素)による混ぜ物処理に問題があった。
この物質に鉛丹の入っていることが見つかった。
この混ぜ物処理は最近ケンブリッジ大学でJ.W.ライト氏が(*以下のように)公表したことによって確認された。
「気がつかないうちに食物の混ぜ物処理が拡がり、その真の犯人を見つけ出すことが如何に困難であるかを示す驚くべき例として、チーズの有毒な混ぜ物処理の詐欺行為の種々な段階について読者の皆さんに話すのは興味が無いことではなかろう。
「ここで読者の皆さんに話さなければならない。グロスターその他のチーズに鉛丹が汚染していて、この汚染がゆゆしい結果を生じている。ここでお話する例、および多分すべての例において、有害な混入は知らないうちに、チーズの色つけに使うアノットへの混ぜ物処理に使われていた。この物質は私が話そうとする例において鉛丹を含んでいることが見つかった。これはその後の実験で示されるように決して稀なことではない。この詐欺行為に進む前にこれが発見された状況を短く話すことにしよう。
「イングランド西部の都市にしばらく滞在することになったある紳士がある晩に、腹および胃の部分に苦しいが記載できない痛みを感じ、緊張の感じを伴い、非常な不安感、苦悩および食物にたいする嫌悪を引き起こした。彼は炎症性病変が起きていることに気がついた。しかし24時間後に症状は完全に消失した。4日後に彼は全く類似した発作を経験した。そのときに彼は思い出した。両方の例ともに夕方遅くに田舎から帰ってきて、彼が家にいるときにはいつでも夕食に出されて好んで食べていたグロスター・チーズの1皿を注文した。彼はこの病気をチーズによるとした。宿屋の女主人にこのことを話した。彼女は非常に驚いた。このチーズは田舎の商人からではなく、ロンドンの有名な店で買ったからであった。従って彼はそこで述べたことは彼の特殊な体質によるものとした。数日後に彼は同じチーズを食べた。そして寝室に入るや否や最も激しい疝痛が彼を襲い、夜なかのあいだ、および翌日の一部まで続いた。ここで料理人は今後チーズのトーストを出さないように指示され、この紳士はこれらの辛い症状を再び経験することはなかった。家の中でこのことが会話の主題になったときに、この紳士の夕食に出したチーズの外側を食べた子猫が激しい病気になったことを女中が話した。女主人はこの発言によってチーズを近くの薬局に調べてもらったところ、このチーズは鉛で汚染されている!という返事が戻ってきた。この返事は予想外だったので多くの人たちの注意をひいた。特にこの問題のチーズは幾つかのお得意に提供されていたからである。
「従ってロンドンの商人によってこのチーズを作った農園主に申立が行われた。農園主はこのアノットを行商から買ったものであり、この行商は彼および近所に何年にもわたってこの商品を売っていて1回も問題が無かったことを宣言した。ここで詳細に述べる必要が無いと思われるこのチーズ製造者についての回り道のような調査によって、商品のアノッタに欠点があり質の悪いものであり、朱(硫化水銀)で色をつけなければならないことが判った。この混合物さえも有害とは考えられなかった。しかしこの製品を売った薬品商に申立を行ったところ、朱に少量の鉛丹を混ぜたとの返答があった。この誤魔化しは完全に無罪とみなされた。これは朱が家のペンキ塗りの色素に使われる前提のもとにしばしば行われているからである。従って薬品商はいつもの商売のように、それがどのように使われるかに疑いを持たずに、利益を増やすために鉛丹を混ぜて、この朱を売った。そしてアノットの混ぜ物処理をしあ購入者は朱が真のものと思い、無害の添加物で彼の贋のアノットの色を高めることに彼は躊躇しなかった。従って、回り道をした枝分かれのある操作によって死の毒の一部が生命の必需品に入り込み、これが入り込むのを可能にした人たちに犯罪性を付け加えることができない。」 この危険な混ぜ物処理はこの疑いのあるチーズの一部を硫化水素を含ませた水に漬けて分解し塩酸で酸性にすると容易に検出できるであろう。
これによってもしも微量でも鉛が存在したらチーズはすぐに褐色または黒色になるであろう。
偽物のコショウとその検出法
黒コショウは地を這う低木の実であり、東インドで野生で育っていて、ジャヴァおよびマラバール(南インド)でその実のために有利に栽培されている。
実は熟する前に集められ太陽で乾かす。
実は黒くなり表面に皺がよる。
贋のコショウ粒が最近になって真のコショウに混ざって見つかったことは充分によく知られた事実である。
知らないで偽物を使っているものにとって、このような混ぜ物処理は多くの家事の例において著しく腹立たしく損害を与えるものであろう。
私は税務局の命令によって黒コショウおよび白コショウの大きな袋を調べたことがあり、16パーセントほどのこの偽物が入っていることを見つけた。
贋コショウは亜麻仁かす(アマの種子から油を絞ったかす)、粘土および一部のトウガラシからなり、塊を作り、まず最初に篩を通し、次に桶の中で転がして丸める。
偽物を見つける方法は容易である。
疑われるコショウの標品を水のボールに投げ込みさえすればよい。
偽物のコショウ粒は粉になるが、真のコショウは完全のままである。
粉コショウはしばしばかなりの量のコショウのほこり、すなわちコショウ倉庫から掃き集めたごみ、に少量のトウガラシを真のコショウに加えて混ぜ物処理をする。
この掃き集めたごみはペッパー・ダストを意味するP.D.として知られ、市場で購入する。
汚いゴミまたはP.D.の掃き集めたものうちの低級品はペッパー・ダストのうちのダストを意味するD.P.D.と呼んで商人のあいだで区別される。
コショウの混ぜ物処理およびコショウの偽物商品を作り売ることは禁じられていて重い罰金(100ポンド)が。
次はその法律の文言である。
「そして最近になりグレイト・ブリテンにおいて、コショウの偽物の商品が売られ、種々のコショウ・ディーラーその他の人々が持っている次第であるので、1819年の7月5日およびそれ以降において以下の法律を制定する。いずれかの人により、いずれかの商品または物質がコショウの偽物として作られ、コショウと混ぜ、コショウとして、またはコショウの代用品として、売られたり配達されたり、そのような商品または物質を、そのまま又は混ぜて、売るために保持したり、売ったり、配達したり、売るために提供したり並べたり、コショウのディーラーまたは販売人の管理または所有するもの、同じものが混ざっているものは、それを入れているパッケジとともに没収され、いずれかの間接税務局の役人により押収されるであろう。そうして上に述べたようにそれを売るか売るために並べたり配達するか、または保管したり所有する人は金額100ポンドを没収される。
白コショウおよびその製法
普通の白コショウは人工産物であって、黒コショウから次のようにして作る。
コショウをまず海水および尿に浸し次に数日のあいだ殻すなわち外皮がゆるむまで太陽の熱に曝す。
次に浸した状態から取り出し、乾いたら殻が外れるまで手で揉む。
白い実を次に乾かし外皮をもみ殻のように吹き飛ばす。
この過程によってコショウの特有な香りおよび刺すような熱い味が取り去られる。
白コショウはいつでも黒コショウよりも香りや質が低い。
しかしコショウの木の一種が作る自然の白コショウがある。
これは偽物よりは優れていて、実際にふつうの黒コショウより劣ってはいない。
有毒なとうがらしとその検出法
トウガラシはいろいろの種類のトウガラシ属(capsicum)の乾かした莢の粉の乱雑な混合物であり、キダチトウガラシ(birdpepper=capsicumfrutescens)が最も辛い。
この1年草は原産地が南アメリカであり、(*当時の)英国領西インド諸島で大量に栽培され、莢が美しいのでしばしば我々の庭園で栽培されている。
この莢は長く尖っていて垂れ下がっており、最初は緑色であるが熟すると明るいオレンジ赤色になる。
莢には乾いた目のあらい髄があり、多くの小さい平たい腎臓形の種が入っている。
トウガラシの味は極めて辛く刺激的で、口にいわば火をつけたようである。
この辛さの主成分は水にもアルコールにも溶ける。
光に曝したときに色が無くなるのを防ぐために時にはこれに鉛丹を添加することがある。
この一部を硫化水素を充満させた水の入った栓のあるバイアルに入れて震盪すると、すぐに暗い泥のような色を呈するようになることにより、この誤魔化しは容易に検出できる。
又は1容の疑問があるトウガラシと3容の硝酸カリウム(または2容の塩素酸カリウム)の混合物を一度に少しづつ赤熱したルツボに投げ入れて植物としての部分を分解する。
後に残った塊を希硝酸で消化し、硫化水素を充満させた水によって溶液の鉛を測定する。
有毒なピックルスおよびその検出法
酢の抗菌作用によってピックルスの名前で保存されている野菜材料は、しばしば売れ行きは活き活きとした秀でた緑色に依存していて、とくに海を往く人のあいだでその消費は莫大なものであり、このピックルスは時には意識的に銅によって色づけられている。
小キウリ(gherkin)、サヤインゲン、クリスムム(samphire)、ミドリ・トウガラシ、その他の野菜をピックルスにしたものには思った以上に銅が入り込んでいる。
この味覚の刺戟物を使った結果による生命に関わる数多くの結果が知られている。
この新鮮で楽しい色合いは、ピックルスを半ペンス銅貨と一緒に煮たりかなりの期間のあいだ真鍮の容器に入れておくなどの、新しい料理書に従って伝えられたものである。
パーシヴァル博士によると「ある若い女性が髪を整えてもらうあいだに銅が入ったクリスムムのピックルスを食べて楽しんでいた。彼女は間もなく胃の痛みを訴えた。そして5日後に嘔吐が始まり2日のあいだ続いた。この後で彼女の胃は驚くべく大きくなり、ピックルスを食べてから9日後に死は彼女を苦しみから楽にさせた。」 現代の料理書の著者たちがピックルスに緑色を与える数多い調理法のうちで、次にのべるものは特に非難されなければならず、将来の版で除くべきである。
「小キュウリをピックルスにするには」―――「酢を鐘青銅(ベル・メタル)または銅の鉢で煮て、沸騰して熱いうちにキウリに注ぎなさい。」「青りんごを作るには」―――「ハシバミの実の大きさの緑青(verdigris)を細かく潰し、半パイントの蒸留酢および1粒の明礬をとり、少しばかりの粗塩(baysalt)を加える。すべてを瓶に入れ、震盪し、透明になるまで静置する。小さい茶匙1杯を未熟リンゴまたは緑にしたいものにかける。」 E.ラフォルト夫人は命令する。
「ピックルスを緑色にするには、それを半ペンス(*銅貨)と煮るか、銅または真鍮の鍋に24時間おく。」 銅の存在を検出するにはピックルスを刻み、アンモニア水を注ぎ、同量の水で希釈し、バイアルに入れて栓をする。
もしもピックルスが極めて少量の銅を含んでいたら、アンモニアは青色を呈する。
酢の混ぜ物処理とその検出法
この国の酢は麦芽から作られてすぐには、薄い茶色をして、完全に透明であり、楽しいがあるていど刺激的な酸の味がしていて、苛烈ではないが芳香がある。
空気に曝すと、麦芽酢にいつも含まれる粘液状の不純物から濁りを生じ、粘着性になり、最後には気が抜けてしまう。
このように具合の悪いことは酢を瓶に完全に満たし、よくコルク栓をすると避けることができる。
そしてコルクをする前に瓶を数分のあいだ沸騰させると良い。
酢は時には酸度を高めるために硫酸によって大きく混ぜ物処理をされることがある。
酢酸バリウム溶液を加えると白い沈殿が生じ、火中でそれを赤熱した後で硝酸に溶けないことにより、硫酸が検出される(159ページ参考)。
酢の酸度が強く見えるように、いろいろな辛い植物成分を入れることがある。
この誤魔化しを検出するのは困難である。
しかし、注意深く味わうとこのような酢の刺激性は酸度であるよりも苛烈さであることが判るであろう。
蒸留酢
家事でいろいろな目的に使われる蒸留酢は、当然にそうあるべきようにガラスを使わないで、ピューターのパイプを使う一般的な蒸留器を使ってしばしば蒸留される。
従って金属による汚染が無いわけには行かない。
計って1オンスの蒸留酢は少なくとも13グレインの大理石を溶かすべきである。
酢酸バリウムを加えても、硫化水素で飽和した水を加えても、沈殿を生ずるべきではない。
前に述べた状態は硫酸の混ぜ物処理をしたことであり、後者は金属の存在を示す 金属による汚染は前に述べたように硫化水素によって最もよく示される。
蒸留酢の商品は上に述べたように鉛ではなく錫を含んでいる。
クリームの混ぜ物処理とその検出法
クリームはしばしば米粉またはクズウコン澱粉によって混ぜ物処理をされる。
前者はしばしばペイストリー料理人によってクリームズおよびカスタードを作るにあたってその目的のため、タルトとか他の種類のペイストリーのために使われる。
後者はロンドンの乳製品製造所においてしばしば使われる。
クズウコン澱粉は米粉より好まれる。
ミルクと一緒に穏やかに沸騰させて濃い糊状にすると、前もってミルクで薄めたクリームに、決して不味ではなくクリームの味を邪魔することはない硬さも表面的な豊かさを、与えるからである。
クズウコン澱粉を少量の冷たいスキム・ミルクと混ぜて、完全に滑らかな均一の混合物にする。
ミルクをもっと加えて全体を数分間沸騰させ、クズウコン澱粉の溶液を作り出す。
この混合物は完全に冷やすとクリームに混ぜる。
1パイントのミルクに220から260グレインのクズウコン澱粉(大きな茶さじ3杯)を加える。
そしてこの溶液1容を3容のクリームと混ぜる。
言う必要は無いであろうが、この混ぜ物処理は完全に無害である。
茶さじ1杯のこの混ぜ物処理をしたクリームに数滴のヨードのアルコール溶液を入れると、瞬間的に濃い紺色になり、この詐欺を検出することができる。
真正のクリームはこの検査をすると薄い黄色味を帯びるだけである。
有毒な砂糖菓子とその検出法
飴玉、果物入り飴、その他の種類の砂糖菓子、とくに下級のキャンディはしばしば公道で子供たちを誘惑して売られていて大きく悪用されている。
シュガー・ピースと呼ばれている白い果物入り飴は主として砂糖、デンプン、コーニッシュ・クレイコーンウォール産の白いパイプ粘土)からなり、赤いドロップはふつう下級の朱で色付けられている。
朱は一般に鉛丹が混ぜ物になっている。
他の種類のキャンディは時には銅の調合物により有毒になっている。
次のマイルス氏の発言はこのことの証明になるであろう。
「しばらく前、菓子屋の家に住んでいたときに緑色の楽しそうな砂糖菓子がブランディに溶かしたサップ・グリーン(クロウメモドキの実からとる色素)で色付けされていることを知った。この色素そのものはクロウメモドキ(buckthornberry)から作られていて無害な物質であることは疑い無い。しかしこの色素の製造業者は長期間にわたって種々の色合いのものを作っていた。あるものは著しく明るく、疑い無く銅の調合物が使われているのであろう。
「この系列のキャンディには銅で汚染された痕跡を見つけ出されるであろう。従ってこの種の菓子の色付けは止めるべきである。この店の経営者は自分たちが使っている物質の毒性を知らないからである。」 この国に輸入されてふつう丸い小箱に入れられている、小さな緑のライム、シトロン、ホップ・トップ、プラム、アンジェリカ根、などの砂糖漬け、はしばしば銅で汚染されている。
糖菓の粘土による混ぜ物処理はそれを大量の沸騰水に入れさせすれば検出できる。
混合物は数日のあいだ静置すると粘土は容器の底に沈むであろう。
そして上澄みを静かに移して沈殿を次第に乾かすと、沈殿は別な状態で得ることができる。
もしも混ぜ物が粘土であったら、沈殿をふつうのタバコ・パイプの火皿に入れて赤熱すると煉瓦のように硬くなる。
菓子の上にアンモニア水を注ぐと銅があるとすぐに青色になるので銅を検出できる。
硫化水素を含み塩酸によって酸性にした水(69ページ参照)を注ぐことによって鉛のあることが明らかになる。
有毒なケチャップとその検出法
この物(catsup:この頃のイギリスでは「野菜または魚などを原料にした調味料」を意味し、トマト・ケチャップではない。
)はこれまで計画された混ぜ物処理のうちで最も非難すべきものである。
一日に出会う量は多く、化学的検査でも銅の多いことが見つかっている。
実際にこの調味料は蒸留酢を得た残り以外のなにものでもなく、次いでクルミの緑の外皮を煎じたもので希釈し、オール・スパイス、トウガラシ、ピーマン、タマネギおよび食塩で味をつけたものである。
このソースは食物に風味をつけるために使われていて、安価なために生活程度の低い人たちがよく使っているものである。
このソースに1度だけでなく何回も検出された銅の量は、家事において使われている他の商品で出会う鉛より以上に多い。
この問題についてルイス氏が述べた次のことは大衆に用心させるのに充分であろう。
私の事業所だけでなく外国貿易にも使うために、大量のピックルスおよび他の料理ソースを大量に購入する習慣があったので、最近になり製造業者から見かけ上が優れたクルミ・ケチャップを買うことになった。
しかし驚いたことに私の旅館支配人としての職業で起きた細かく述べる必要は無い状況からこの商品に有害な物質で汚染しているのではないかと信ずる理由を持った。
そして問題である商品の調合を調べるようになったのはこのことによっている。
「普通に行われるようにケチャップは銅器具の中で煮て作るので、クルミの外側の緑の皮は空気に曝し、食酢製造者の蒸留器の中で残渣として残った酢残留物によって強化された食酢の中で、食塩、一部のピーマンやペッパー・ダストと結合して、黒くなる。従って私はケチャップが銅によって汚染されているのではないかと疑った。自分自身でこの意見に確信を持つために、私はこれの1クォートを土鍋で煮て乾かして暗褐色の塊にした。私はこの塊を坩堝に入れて、これが孔の開いた黒い炭になるまで、炭火で赤熱した。鞴を使って火を起こし、坩堝の中の塊をタバコ・パイプの柄でかき混ぜ、これは強火2時間で灰白色の灰になった。しかしその中に金属を見つけることは出来なかった。私はその上にアクア・フォルティス(硝酸)を注いだところ、殆ど全部が発泡して溶解した。そしてしばらく放置して不溶部分を沈殿させると、強い金属の味がする明るい草の緑色をした液が作られた。ナイフの刃をこの溶液に浸すと、この刃はすぐに銅の明るいコートで覆われた。」「従ってこのクルミ・ケチャップは明らかに銅によって強く汚染されていた。製造業者にこの事実を伝えたところ、この煮汁製造は一般に行われており、彼は20年にわたりこの方法でこの商品を作ってきたと保証した。
「これこそ私が伝えたい発言である。貴方のリテラリー・クロニクルに載せてくださったら、不注意な人たちがこのソースを銅器具で煮て作り、煮汁を汚染させて有毒にする習慣にたいして警告を発することになるであろう。」
有毒なカスタード
有毒な植物のチェリー・ローレル(prunuslauro-cerasus:西洋博打の木:シアン配糖体を含む)の葉は大部分の人が好む桃の種またはビター・アーモンド(苦扁桃)の仁に似る木の実の香りを持っている。
これらの葉は古くから料理人のあいだでアーモンドや桃の種の仁の香りをカスタード、プディング、クリーム、ブラン・マンジェ、その他の食卓の珍味に移すのに使われてきた。
カスタードその他の料理に入っているチェリー・ローレルの毒は非常に少量なので全く無害であると、主張されてきた。
この主張を打ち破るためには数多くの例を引用することができる。
そしてそのうちで最近のものとして、4人の子供たちがこの有毒な葉で香りをつけたカスタードを食べて最も重篤なことになった。
「リッチモンド(大ロンドンの南西部)の近くの寄宿学校の何人かの子供たちが、料理人がよく行うチェリー・ローレルで香りをつけたカスタードを食べた。4人の哀れな悪意を持たない子供たちがそのために思い病気になった。そのうちの6才の少女2人と5才の少年は深い眠りに陥って彼らは目覚めなかった。
種々の医療が試みられたにも拘わらずその少年は10時間、少女は9時間のあいだ無感覚であり、他の2人のうちの6才の少女と7才の少女は上腹部に強い痛みを訴えた。彼らすべては3日間の病気の後で回復した。私は貴方にこの事実を伝えるのは心配である。貴方の雑誌はこの国のすべての学問的な権威者によって読まれていることを知っているからである。私は貴方がこの文章を貴方のリテラリー・クロニクルの隅に置いて、不注意な人たちが料理を有毒なハーブであるチェリー・ローレルで有害な香り付けから自分たちを守るのに貢献させて下さること希望します。
貴方への尊敬をもって、トマス・リディアード どんなセンスまたは分別を持った人が、プディングやクリームにそんなに危険な成分を混ぜる無知な料理人の判断を信用するのだろうか?気のふれた人以外に誰が自分の食物を毒物で味付させるだろうか?
チェリー・ローレルの葉から蒸留された水は、ノワイヨ(noyeau)と呼ばれる強壮剤の香りを移すために、しばしばブランディその他の蒸留酒に混ぜ入れられる。
この液体は長いあいだしばしば香りづけに使われてきたが、1728年まで有毒であるとは知られていなかった。この時にダブリン(アイルランドの首都)で2人の女性が普通に蒸留したチェリー・ローレル水を飲んで突然に死亡して、これの有毒であることが示された。
有毒なアンチョビ・ソースとその検出法
我々が調べたこの魚ソースの幾つかのサンプルは鉛で汚染していた。
この魚ソースの作り方は、崩したアンチョヴィをすりばちですりつぶす。
そしてこの砕いた塊は暗褐色なので見つからずにある量のヴェネチアン・レッド(酸化鉄)を加えることができる。
これは色をつけるためであって、真正のものであれば無害な着色物質である。
しかしこの色素はオレンジ・レッドで混ぜ物処理されている例がみつかった。
これは鉛丹のより良い種類であり、すなわち鉛の赤色酸化物である。
この不正行為は229ページに述べたように見つけだすことができる。
用心深いオイルメン(?
)は色をあまり気にしないで、もっと無害な色素であるアルメニア赤土をこの毒の代わりにしている。
以下は薬局方へのグレイの追補(241ページ)からこの魚ソースを作る処方を写したものである。
「アンチョヴィを2ポンドから4ポンド半。パルプ(どろどろしたもの)を細かい馬毛の篩を通す。骨を7オンスの食塩と6ポンドの水と煮る。濾す。小麦粉7オンスとこの魚のパルプを加える。煮る。全部を篩を通す。好みに応じてヴェネチアン・レッドを加える。これで1ガロンが得られる。」
咳止めドロップへのまぜ物とその検出法
ロジンジ(咳止めドロップ、菱形)、とくに成分に生姜、クレモール・タルタール(酒石酸水素カリウム)、マグネシア、などのように水溶性でないものが入っているもの、はしばしば混ぜ物処理がされている。
混ぜ物になっている成分はふつうパイプ白色粘土であって、そのうちのかなりの部分は砂糖の代用である。
次に述べる誤魔化しの検出は最近にT.ロイド博士が行ったものである。
近ごろ入手した生姜ドロップのあるものが、石炭の火に偶然に放り込まれたときに殆ど変化を起こさないのを見て、私は少なからず驚いた。
前もって赤熱しておいたシャベルの上にドロップを1つ置くとすぐに火がつくが、炎を出して炭になることはなく、火がついてほんの半分ほと弱い炎をだして後に石のように硬い物質を残し、ロジンジ(菱形)の形はそのままであった。
この予期しない結果によって私はシティ(ロンドンの中心街)の有名な薬局で買ったこれらのドロップを調べた。
すぐに判ったことに、これらを作るにあたって、砂糖の代わりにかなりの量のパイプ白色粘土が使われていた。
この商品を売った店にこの誤魔化しについて文句を言ったところ、2種類の生姜ドロップが売られていて、あるものはオンスあたり3ペンスであり他はオンスあたり6ペンスと言うことを教えられた。
私に間違えて提供されたのは安い方であった。
後者(高価な方)はエピセット・ヴェーラム(真の名前)の通りであって、砂糖と生姜だけからなっている。
しかし前者は生姜とギニア・ペッパー(数種のペッパーの混合物)を含み、かなりの部分がコーンウォール粘土からなっていてほんの一部だけが砂糖であった。
同じように、トールバルサム・ドロップ(健胃、去痰)、薄荷ドロップ、および生姜パール、その他のドロップには2種類が用意されていることを教えられた。
安値商品と呼ばれるものは、自分が利口であるとうぬぼれていて商品の欠陥には目をつぶって安く手に入れることの喜びを楽しみ、値段交渉を好んで他の人たちよりも良いバーゲンで買おうとする人たちのために、作られている。
そして第2に払いの悪い人たちのためのもので、製造者としては自分の信用のために製品の普通の値段以上を請求することはできないので、彼が受けるリスクおよび長期間に渡るクレジットを取り返すために、混ぜ物処理によって価値を下げることを自分自身に納得させている。
生姜パールと呼ばれる飴はしばしば粘土で混ぜ物処理がされている。
これらの誤魔化しは225ページに述べた方法で検出できる。
有毒なオリーブ油とその検出法
この油の原料となる果実(=オリーヴ)は鉛板からなる絞り機で処理されるので、この商品は時に鉛によって汚染されていることがある。
そしてさらに(とくにスペインでは)売るために市場に持ち込む前にこの油は透明になるように鉛のタンク内で保存されるからである。
フランスおよびイタリアのオリーヴ油にはふつうこのような汚染は存在しない。
オリーヴ油には時にケシ種油が混ざっている。
しかし、これらの混合物が凍る温度に持ってくると、オリーヴ油は凍結するが、ケシ種油は液体のままである。
そして最も凍りにくい油は最も酸敗(rancid)しやすい。
すなわちオリーヴ油はケシ種油が混ぜられることによって悪化する。
良質のオリーヴ油は淡黄色であるていど緑色がかっている。
穏やかな味で臭いがない。
そして華氏38度(摂氏3度)で凍るべきである。
この国ではしばしば酸敗する。
鉛の存在は、1容の疑わしい油と2または3容の硫化水素を含む水とを栓をしたバイアル内で震盪することによって、検出される。
もしも身体に悪い金属が存在すると、この試薬はその油を暗褐色または黒色にする。
しばしば行われているようにこの油をピューター(錫の合金)または鉛のタンクに保存するのは好ましくない。
油はこの金属に反応するからである。
この商品を取り扱っている商人はこのように保存することにより酸敗を防ぐと主張している。
そのために小売商人のうちにはピューター製の計量器を油の中によく入れっぱなしにしている。
辛子の混ぜ物処理
粉であるにしろ、すぐに使うためのペーストの状態であるにしろ、たぶん稀にしか真正の辛子に店で出会うことはないだろう。
真のダーラム(イングランド北東部)辛子と呼ばれている品物はふつうは、辛子、普通の小麦粉、一部トウガラシ、粗塩、の混合物を水でペースト状にして直ぐに使えるようにしたものである。
製作者によっては辛子にカブの種およびエンドウ豆の粉で混ぜ物処理をしている。
素晴らしい黄色はターメリック(ウコンの地下茎から得られる香辛料)から辛子に与えられたものであるとしばしば言われている。
私はこの主張が正しいことに疑いを持っている。
ほんの少量のターメリックでも、カリウムまたは他の種類のアルカリ溶液を数滴加えると明るい黄色が茶色または深い橙色になるので、直ちに検出することができる。
2オンス半のトウガラシ、1-1/2ポンドの粗塩、8ポンドの辛子粉、および1-1/2ポンドの小麦粉を、粗塩を前もって溶かしておいた必要量の水で硬いペーストにしたものがいわゆるダーラム辛子であって壺に入れて売られる。
食塩とトウガラシは既製品の辛子を保存するのに実際に役立つ。
従ってこのテーブルの商品の普通の混ぜ物処理には有害なことは何もない。
この誤魔化しは真正の商品そのものの質と香りを悪くするだけである。
レモン酸の混ぜ物処理とその検出法
レモンの絞りジュースは、糖、粘質物、およびそれが含んでいる抽出物のために、極めて悪くなり易いことは誰にもよく知られている。
そして従って悪くなり難く容量を小さくするために種々の方法が行われた。
ジュースはロブ(煮詰めたもの)の形にまで水分を蒸発させてきた。
しかしこれによって不愉快な焦げた臭いを持つようになり異物を分離することができず、熱帯の気候で船の上で震盪されると悪くなりやすい。
凍らせて水分の一部は氷のして取り除かれたが上に述べたと同じようなことになり易かったし、レモンが充分に作られる所では充分な程度の寒さが無かった。
ある程度アルコールを加えると粘液質は分離されるが抽出物や糖は分離されなかった。
しかしここで詳しく述べる必要が無い化学過程で、ジュースの中の関係する異物を分離することによって、今ではクエン酸が完全に純粋に結晶の形で作られ、固形レモン酸の名前で売られている。
家庭用にも医療用にもこの状態は非常に便利である。
1ドラム(薬用単位:60グレイン)を1オンスの水に溶かすと、新鮮な同量のレモンジュースの強さと同じである。
レモンの香りを移すには砂糖の塊をレモンの皮にこすりつけてレモンの精油を砂糖に染み込ませ、その砂糖を純粋なクエン酸とともに、レモネード、ニーガス酒、ポンチ(ワインに水、砂糖、果汁などを混ぜた飲料)、シュラブ(果汁、砂糖などにアルコールを加えた飲料)、ジェリー、料理ソースなどに加える。
不正直な商人はしばしばクエン酸を安価な酒石酸で置き換えることがある。
菓子料理人が作ったニーガス酒やレモネード、およびロンドンの居酒屋で売っているポンチと呼ばれる酒、はふつう酒石酸で作られている。
クエン酸を酒石酸から区別するには、疑わしい酸の濃厚溶液を、過剰であることを注意して、塩化カリウムの飽和溶液に加えさえすればよい。
もしも沈殿が起きたら誤魔化しは明白である。
クエン酸は塩酸またはカリウムの溶液で沈殿を作らないからである。
又は酒石酸カリウムの飽和溶液に、疑わしい酸の飽和溶液を過剰に加えると、殆ど不溶性の小さい顆粒状の結晶ができる。
純粋なクエン酸は酒石酸カリウムに過剰に加えてもこのような効果は起きない。
毒きのこ
きのこ類は古くからソースとかその他の調理材料に使われてきた。
しかしこれらのきのこ類のある種の有害の効果が多く記録されていて、そのうちの殆どすべては毒の問題であった。
プリニウスはその論文でローマのひとたちの贅沢に反対の叫びをあげて、このように危険な食べ物を食べることに特別な楽しみを持つことを不思議がった。
しかし舌の好みがこのように危険な贅沢、セネカが「享楽的な楽しみ」と呼んだものにふけるならば、温和な食用きのこを良いものと悪いもの、言い換えると有毒なもの、を区別できる有能な人たちを集めるべきであるが、普通はそのようなことはないし、それらを強く印しづけている性質は存在しない。
次のことはナイツブリッジ(ロンドンのウェスト・エンド地区)の外科医グレン氏が刊行したものである。
「ナイツブリッジに住んでいる貧しい男がマッシュルームを採るためにハイド・パークを散歩した。彼はかなりの量を集めシチューをつくり、食べ始めた。食事を初めて8分から10分たって6つか8つをのこして全部食べ終わった頃に、全身の痙攣と突然の脱力感を伴って眩暈、目の前の霧すなわちめまいを突然に覚えて、その結果として椅子から殆ど転げ落ちるのではないかと思われた。これに記憶の消失がつづいて、どこに居るかとか、周囲の状態を忘れてしまった。この記憶喪失は間もなく終わり、奮起して500ヤードほど離れたグレン氏の助けを得るために起き上がった。半道ほど行ったところで彼は再び記憶を失い、以前に良く知っていたにもかかわらず道が判らなくなった。彼は友達に出会い、友達は彼の状態を理解するのが困難であったが、グレン氏の家まで連れて行った。彼の顔つきは大きな心配をさらけ出していた。彼は酔っ払いのようにふらふらし、すぐに寝込みそうであった。彼の脈は遅く弱かった。グレン氏はすぐに彼に吐剤を与えた。きのこの毒は胃の感受性を低下させ、他の吐剤を与えたが、殆ど20分のあいだ嘔吐が起きなかった。このあいだに彼の眠気は増大し、補助のもとで部屋を歩かせることによってのみ目覚ましておくことができたほどであった。彼はまたこの時にふくらはぎに苦しい痛みを訴えた。ついに完全な嘔吐が起きた。吐剤が作用した後で彼の一般状態は良好になったが、依然としてうとうととしていた。夕方になりグレン氏は彼の状態が良くなったことに気がついた。」 以下はメディカル・トランスアクションズ第※巻に記録されているものである。
「中年の男は彼がシャンピニオン(=マッシュルーム)と呼んでいるものを集め、シチューにし、彼自身および妻と食べた。約4才の彼らの子供も少しばかり食べ、パンの小片をシチューの液体に漬けた。食べて5分ほどしてその男は異常にじっと見るようになり、目を閉じることが出来なくなった。すべての物が種々の色のついているように見えた。彼自身が胃と呼んでいるところに動悸を感じた。彼の身体全体が膨張したような気がした。自分で何をしたか言ったか判らなかったし、時には何も話すことができなかった。これらの症状は多かれ少なかれ24時間つづいた。その後に異常は少なくなるか消失した。具合が悪くなってすぐ後にスクループル(=20グレイン=約1.296グラム)のワイト・ヴィトリオール(硫酸亜鉛:吐剤)が与えられ、2回または3回繰り返されて大量に嘔吐をした。
「婦人は39才で同じような症状を感じ、より高度であった。彼女は声も感覚も全く失い、痴呆状態で怒り狂い、押さえていなければならなかった。硫酸亜鉛を与えたが彼女はそのうちの非常に少ししか摂ることができなかった。4-5時間後にはしかしだいぶ回復したが、幾日ものあいだ健康と言えない状態がつづき、以前の健康と力を満喫することはできなかった。そして1月のあいだ胸、胃、腸に膨満感を伴う熱と重さを感じた。彼女の頭は最初に目覚めたときにかなり混乱していて、それまで感じていなかったような胸騒ぎ、震え、その他のヒステリー的な症状をしばしば呈した。
「子供は両腕にある程度の痙攣を起こしたが、その他にはほとんど異常が無かった。彼は半スクループルの吐根(ipecacuanha)を摂ることができて、これにより嘔吐をし、間もなく回復した。」
きのこケチャップ
食用きのこはきのこケチャップと呼ばれるソースの基礎である。
この大部分はきのこを生やしている庭師によって作られる。
このソースを作るためのきのこは一般に腐敗状態にあり、市場で売れるものではない。
どんな野菜でもきのこのように自然に分解するものはないからである。
きのこは育てていた堆厩肥から採って数日たつと無数の昆虫の住処になった。
そして売りものになる茸さえよく見ると生命がうようよしていることが判る。
有毒なソーダ水とその検出法
ソーダ水と呼ばれる飲み物はしばしば銅および鉛で汚染されている。
これらの金属は炭酸水を作るのに使われる装置を製作するのに使われ、そしてソーダ水が含む非常に過剰な炭酸はとくに装置の金属物質に強く作用する。
その水に硫化水素水を通してみると読者は真理は納得するのに困難を見つけないであろう―――70ページ参照。
銅容器で有毒になった食物およびその検出法
多くの種類の食品が銅の調理器具を使うことによって銅でしばしば汚染されている。
このような器具を使って食物を調理することによって我々は毎日のように中毒の危険を受けている。
調理に使うほとんどすべての酸性の野菜および脂肪質すなわち脂ぎった食品は銅に作用して