綜合大学の図書

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その三人の男の子たちの教育から家事のことまで、いつも夫人の相談を受けてゐた。ある日、夫人が宅へ見えられて、家計上の必要もあるから、八雲ののこした藏書を始末したいから、なるべく早稻田で買つてほしいといふことであつた。その藏書といふのは、日本造りの西大久保の宅で、フランス語の本が一室、英語と日本語の本が一室、純日本風の書物箱に納めて、ぎつしりと並べられてゐた。夫人の言葉では、官立の帝大から早稻田へ移つてから、ほんとに故郷へ歸つたやうに氣樂になつたと喜んでゐたから、書物も早稻田へ納めたい。法政大學では八千圓で頂戴したいといふけれども、早稻田ならその半分でもかまはないといふことであつた。

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