二百十日

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ろくさん向うむこう草山くさやま見つめみつめながら顫えふるえいる
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あと山鳴りやまなり比較的ひかくてき静まっしずまっ
する地面じめんしたほうおおおい呼ぶよぶこえする
ろくさん両手りょうてみみ後ろうしろ宛てあて
おおおい たしか呼んよんいる
不思議ふしぎことそのこえみょうあししたから湧いわい出るでる
おおおい ろくさん思わおもわこえしるべ飛び出しとびだし
おおおいかん高いたかいこえはい縮むちぢむほど絞り出すしぼりだす太いふといこえくさしたからおおおい応えるこたえる
けいさんない
ろくさんむねまで来るくるうすむやみ押し分けおしわけずんずんこえするほう進んすすん行くいく
おおおいおおおいどこおおおいここどこああここああむやみくるあぶないぞう落ちるおちるぞうどこ落ちおちああここ落ちおちああつけろうつけるどこ落ちおちああ落ちるおちるあしまめ痛いいたいぞう大丈夫だいじょうぶああどこ落ちおちああここだあもうそれからさき出るでるじゃないようおれそっち行くいくからそこ待っまっいるよう けいさん胴間声どうまこえ地面じめんなか通っとおっだんだん近づいちかづい来るくる
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くさなか立ったっろくさん覚束なくおぼつかなく四方しほう見渡すみわたす向うむこうくさやまぶつかっ黒雲くろくもみねはんはらどっと崩れくずれうみよう濁っにごっものあたま去るさる五六ごろくさしところまで押し寄せおしよせくる
時計とけいもう近いちかい
やまなかばたださえ薄暗くうすぐらくなる時分じぶん
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刻々こっこく逼るせまる暮色ぼしょくなかあらしまんじ吹きふきすさむ
噴火ふんかあなから吹き出すふきだすいくまんこく煙りけむりまんじなか万遍まんべんなく捲き込ままきこまあらし世界せかい尽くしつくしどす黒くどすぐろく漲りみなぎり渡るわたる
おいいるいるなん考えついかんがえついいいやま模様もようどうだんだん荒れるあれるばかり今日きょう何日なんにちっけ今日きょうきゅうつきことよる二百十にひゃくじゅう知れしれない 会話かいわまた切れるきれる
二百十にひゃくじゅうかぜあめ煙りけむり満目まんもくくさ埋めうめ尽くしつくしいちていさき靡くなびく姿すがたさえ判然はんぜん見えみえようなっ
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阿蘇あそやま割れるわれるばかりにごう鳴るなる
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おおおいおらおおおいこっち 薄暗いうすぐらい谷底たにそこ半町はんちょうばかり登っのぼっところぼんやり白いしろいもの動いうごいいる
手招きてまねきいるらしい
なぜそんなところ行っいっああここから上がるあがるああ上がれるあがれるああ上がれるあがれるから早くはやくおおい ろくさんはら痛いいたいあしまめ忘れわすれ脱兎だっといきおい飛び出しとびだし
おいここいらそこそこちょっとくび出しだしくれこうなるほどこりゃ大変たいへん浅いあさいこれならぼく蝙蝠傘こうもりがさうえから出しだしたらそれ取っとっ捕らまっとらまっ上がれるあがれるだろうかさだけじゃ駄目だめきみ気の毒きのどくうんちっとも気の毒きのどくじゃないどうする兵児帯へこおび解いといそのさきかさがら結びつけむすびつけきみかさがら曲っきょくってるだろう曲っきょくってるとも大いにおおいに曲っきょくってるその曲っきょくってるほう結びつけむすびつけくれない結びつけるむすびつけるともすぐ結びつけむすびつけやる結びつけむすびつけたらそのおびはしうえからぶら下げぶらさげくれまえぶら下げるぶらさげるともわけない大丈夫だいじょうぶから待っまっまえそうら長いながい天竺てんじくからぶら下がっぶらさがったろうきみしっかりかさ握っにぎっなくっちゃいけないぼく身体しんたい十七じゅうななぬき六百ろっぴゃくあるからなん貫目かんめあっって大丈夫だいじょうぶ安心あんしん上がりあがりたまえいいいいともそら上がるあがるいやいけないそうずり下がっずりさがっては今度こんど大丈夫だいじょうぶいま試しためしだけさあ上がっあがっ大丈夫だいじょうぶきみ滑べるすべる二人ふたりとも落ちおちしまうから大丈夫だいじょうぶいまかさ持ちもちようわるかっきみうすあしかけ持ちもち応えこたえまえあんまりまえほう張るはるがけ崩れくずれあし滑べるすべるよし大丈夫だいじょうぶさあ上がっあがっあし踏ん張っふんばっどう今度こんどあぶないようおいなんきみぼくちからない思っおもっ大におおいに心配しんぱいするうんぼくって一人前いちにんまえ人間にんげん無論むろん無論むろんなら安心あんしんぼく信頼しんらいたらよかろうから小さいちいさい朋友ほうゆう一人ひとり谷底たにそこから救い出すすくいだすぐらいこと出来るできるつもりじゃ上がるあがるそらっそらっもう少しすこし まめ一面いちめん腫れ上がっはれあがっ両足りょうあしうんとうす踏ん張っふんばっろくさん素肌すはだ二百十にひゃくじゅうあめ曝しさらしまま海老えびようこし曲げまげ一生懸命いっしょうけんめいかさがらかじりついいる
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その自然しぜん彎曲わんきょく一端いっぱし鳴海なるみ絞りしぼり兵児帯へこおび薩摩さつま強弓ごうきゅう新しくあたらしく張っちょうっげんごとくぴんうす押し分けおしわけさきたになかかくれいる
その隠れかくれいるあたりからしばらくする大きなおおきな毬栗頭いがぐりあたまぬっ現われあらわれ
やっと云ういう掛声かけごえとも両手りょうてがけえんかかる早いはやい大入道だいにゅうどうこしからうえ斜めななめしり挿しさし蝙蝠傘こうもりがさともたにからうえ
同時どうじろくさんどさん仰向きあおむきなっうすそこ倒れたおれ