幻影の盾

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その一本一本の末は丸く平たい蛇の頭となってその裂け目から消えんとしては燃ゆる如き舌を出している。毛と云う毛は悉く蛇で、その蛇は悉く首を擡げて舌を吐いて縺るるのも、捻じ合うのも、攀じあがるのも、にじり出るのも見らるる。五寸の円の内部に獰悪なる夜叉の顔を辛うじて残して、額際から顔の左右を残なく填めて自然に円の輪廓を形ちづくっているのはこの毛髪の蛇、蛇の毛髪である。遠き昔しのゴーゴンとはこれであろうかと思わるる位だ。ゴーゴンを見る者は石に化すとは当時の諺であるが、この盾を熟視する者は何人もその諺のあながちならぬを覚るであろう。

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たてはじめある
みぎかたからひだりしゃ切りつけきりつけかたなあと見えるみえる
たま並べならべようびょういち半ばなかば潰しつぶしゴーゴンごーごんメジューサめじゅーさ夜叉やしゃみみあたり纏うまとうへびあたま叩いたたいよこのべいたたいら微かかすか細長いほそながい凹みへこみ出来できいる
ウィリアムうぃりあむこのはじめ因縁いんねん聞くきく何になんに云わいわ
知らしら云えいえ知るしる云ういう
知るしる云えいえ言いいい難しむずかし答えるこたえる
ひと云えいえたて由来ゆらいうらひと云えいえこい恨みうらみ潜んひそんいる
ひと云わいわたて歴史れきしなかいらかみいらまで思いつめおもいつめたるもちつな繋がつなぎがいる
ウィリアムうぃりあむ毎夜まいよまい繰り返すくりかえすこころ物語りものがたりこのたて浅からあさから因果いんが覊絆きはん結び付けむすびつけられいる
いざという時いざというときこのたて執っとっもちこれある
こころおく何者なにものほのめい消えきえ難きがたき前世ぜんせい名残なごり如きごとき白日はくじつした引き出しひきだしあきらよう極むるきわむるこのたてちからある
いずくより吹くふくとも知らしら業障ごっしょうかぜすき多きおおきむね洩れもれ見えみえなみ立ちたち崩れくずれ崩れくずれ立つたつなみなきむかしかぜ吹かふかむかし返すかえすこのたてちからある
このたてだにあらウィリアムうぃりあむたて懸かれかかれかべ仰ぐあおぐ
天地人てんちにん呪うのろうべき夜叉やしゃ姿すがたかれ画けるえがける天女てんにょ微かかすかわらいおびべるが如くごとく思わおもわるる
わが思うおもうひと肖像しょうぞうなき疑ううたがうおりさえある
ただ抜け出しぬけだし語らかたら残念ざんねんある
思うおもうひと
ウィリアムうぃりあむ思うおもうひとここ居らおら
小山こやまさん越えこえ大河たいがいち渉りわたり二十にじゅう哩先よるからすしろ居るいる
よるからすしろから不吉ふきつあるウィリアムうぃりあむ時々ときどき考えるかんがえることある
然ししかしそのよるからすしろかれ小児しょうに度々たびたび遊びあそび行っいっことある
小児しょうにのみない成人せいじんから始終しじゅう訪問ほうもん
クララくらら居るいるところならうみそこ行かいかられ
かれつい近頃ちかごろまでよるからすしろ行っいっ終日しゅうじつクララくらら語りかたり暮しくらしある
こいつけ千里せんり行くいく
二十にじゅう云ういう足らあしら
よる守るまもるほしかげ自ずとおのずと消えきえひがしそら紅殻べにがら揉み込んもみこんよう時刻じこく白城しらき刎橋うえ騎馬きばさむらい一人ひとりあらわれる
よい明星みょうじょう本丸ほんまるやぐら北角きたずみピカぴか見えみえはつ遠きとおきほうよりまたひづめおとひるよるさかい破っやぶっ白城しらきほう近づいちかづい来るくる
うま総身そうみあせかい白いしろいあわ吹いふいいる乗手のりてむち鳴らしならし口笛くちぶえふく
戦国せんごくならいウィリアムうぃりあむうまひと成っなっある
去年きょねんはるころから白城しらき刎橋うえ暁方あかつきがた武者むしゃかげ見えみえなくなっ
夕暮ゆうぐれひづめおと逼るせまるくろきものうら吸い取らすいとら聞えきこえなくなっ
そのころからウィリアムうぃりあむ己れおのれ己れおのれなか引き入るひきいるよううちうち深くふかく食い入るくいいる気色けしきあっ
はなはる余所よそただこころなか貯えたくわえたる何者なにもの使いつかい尽すつくすまでどうあっ外界がいかい転ぜてんぜよう見受けみうけられ
武士ぶしいのちおんなさけぐんある
われ思うおもうひと為めためはし上げあげ下しおろし云ういう誰彼だれかれ傚っならっわがクララくらら為めため云わいわことないそのこえ咽喉のど出るでる塞がるふさがる声帯せいたい無理むり押し分けるおしわけるようあっ
如きごとき葡萄ぶどうさけ髑髏どくろかたちさかずきうけえん越すこすことゆるさひげまで濡らしぬらし呑み干すのみほすひとなかかれただがく抑えおさえ斜めななめあわ吹くふくこと多かっおおかっ
やま盛るもる鹿しかにく好味こうみかたな揮うふるうひだり顧みかえりみみぎ眺めながめただわがまえ置かおかたるさらのみ見詰めみつめ済すなすおりあっ
さらうえたいかき肉塊にくかい残らのこらこと少ないすくない
武士ぶしいのちさんぶんおんなさけぐん
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