永日小品

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その二間を行き尽くすとまた二間ばかり先が見えて来る。世の中が二間四方に縮まったかと思うと、歩けば歩るくほど新しい二間四方が露われる。その代り今通って来た過去の世界は通るに任せて消えて行く。

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四つ角よつかどバスばす待ち合せまちあわせいる鼠色ねずみいろ空気くうき切り抜かきりぬきかきゅうまえうまくび
それバスばす屋根やねいるひとまだきり切らきらいる
こっちからきり冒しおかし飛乗っとびのっした見るみるうまくびもう薄ぼんやりうすぼんやりいる
バスばす行き逢うゆきあうとき行き逢っゆきあっだけ奇麗きれい思うおもう
思うおもうなくいろあるもの濁っにごっそらなか消えきえしまう
漠々ばくばく無色むしょく包まつつま行っいっ
ウェストミンスターうぇすとみんすたーはし通るとおるとき白いしろいもの一二いちに掠めかすめこぼしえっ
ひとみ凝らしこらしその行方ゆくえ見つめみつめいる封じ込めふうじこめられ大気たいきかもめゆめよう微かかすか飛んとん
そのあたまうえビッグベンびっぐべん厳にげんにじゅう打ち出しうちだし
仰ぐあおぐそらなかただおとだけする
ヴィクトリヤよう足したしテートてーとやかたそばかわ沿そいバタシーばたしーまで来るくる今までいままで鼠色ねずみいろ見えみえ世界せかい突然とつぜん四方しほうからばったり暮れくれ
泥炭でいたん溶いとい濃くこく周囲しゅうい流しながしよう黒いくろいいろ染めそめられ重たいおもたいきりくちはな逼っせまっ
外套がいとう抑えおさえられ思うおもうほど湿っしめっいる
軽いかるい葛湯くずゆ呼吸こきゅうするばかり気息きそく詰まるつまる
足元あしもと無論むろん穴蔵あなぐらそこ踏むふむ同然どうぜんある
自分じぶんこの重苦しいおもくるしい茶褐色ちゃかっしょくなかしばらく茫然ぼうぜん佇立ちょりつ
自分じぶんそばひと大勢おおぜい通るとおるよう心持こころもちする
けれどかた触れ合わふれあわない限りかぎりはたしてひと通っとおっいるどう疑わしいうたがわしい
そのこの濛々もうもうたる大海たいかいいちてんまめぐらい大きさおおきさどんより黄色くきいろく流れながれ
自分じぶんそれ目標もくひょうよんあゆみばかり動かしうごかし
するある店先みせさきまど硝子がらすまえかお
みせなか瓦斯がす点けつけいる
なか比較的ひかくてき明かあきらかある
ひとつねごとくふるまっいる
自分じぶんやっと安心あんしん
バタシーばたしー通り越しとおりこし手探りてさぐりないばかり向うむこうおかあし向けむけおかうえ仕舞屋しもたやばかりある
同じおなじよう横町よこちょう幾筋いくすじ並行へいこう青天せいてんした紛れまぎれやすい
自分じぶん向っむかっひだり曲っきょくっよう
それからまちほど真直まっすぐ歩いあるいよう心持こころもち
それからさきまるで分らわからなくなっ
暗いくらいなかたっ一人ひとり立ったっくび傾けかたむけ
みぎほうからくつおと近寄っちかよっ
思うおもうそれ四五しご手前てまえまで留まっとまっ
それからだんだん遠退いとおのい行くいく
しまい全くまったく聞えきこえなくなっ
あと寂としんといる
自分じぶんまた暗いくらいなかたっ一人ひとり立ったっ考えかんがえ
どうたら下宿げしゅく帰れるかえれるかしらん
懸物かけもの
大刀たち老人ろうじん亡妻ぼうさいさん回忌かいきまできっといちもと石碑せきひ立てたてやろう決心けっしん
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大刀たち老人ろうじんとうとう先祖せんぞ伝来でんらい大切たいせついちはば売払っうりはらっきん工面くめんしようきめ
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女房にょうぼう二人ふたり子供こどもあるうえ大刀たち老人ろうじん孝養こうよう尽くすつくすからほね折れるおれる
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かおからした一面いちめん黄色いきいろいしま包まつつまいる
長いながいそでさんすんえん牽いひい
これあたまより高いたかい胡麻ごまたけつえ突いつい
つえさきひかり帯びおびとりはねふさふさ着けつけ照るてる輝かしかがやかし
えん牽くひく黄色いきいろいしまそでらしいうらぎんよう光っひかりっ思っおもったらこれ行きいき過ぎすぎ
するすぐあとから真白まっしろかおあらわれ
がくから始まっはじまっ平たいひらたいほお塗っぬっあごからみみまでぼっかべよう静かしずかある
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くちびるくれないいろ重ねかさね青くあおく光線こうせん反射はんしゃ
むねあたりはといろよう見えみえしたすそまでばっ視線しせん乱しみだしいるなか小さなちいさなヴァイオリンゔぁいおりん抱えかかえ長いながいゆみ厳かおごそか担いにないいる
あし通り過ぎるとおりすぎるあと背中せなか黒いくろい繻子しゅす四角しかくかたあてその真中まなかある金糸きんし刺繍ししゅう一度いちど浮いうい
最後さいごもの全くまったく小さいちいさい
手摺てすりしたから転げ落ちころげおちそうある
けれど大きなおおきなかおいる
そのなかあたまこと大きいおおきい
それ五色ごしきかん戴いいただいあらわれ
かん中央ちゅうおうあるぽっち高くたかく聳えそびえいるよう思わおもわれる
模様もようある筒袖つつそで藤鼠ふじねず天鵞絨びろーどぼう下っしたっものからこししたまで三角さんかく垂れたれ赤いあかい足袋たび踏んふん
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団扇うちわあかあおともえうるし描いえがい
行列ぎょうれつ静かしずか自分じぶんまえ過ぎすぎ
開け放しあけはなしなっ空しいむなしいひかり書斎しょさい入口いりぐち送っおくっ縁側えんがわはばよんさし寂しさびし感じかんじ向うむこうすみきゅうヴァイオリンゔぁいおりん擦るするおと
つい小さいちいさい咽喉のど寄り合っよりあっどっと笑うわらうこえ
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むかし
ピトロクリぴとろくりたにあき真下ましたある
じゅうつき入るはいるはやし暖かいあたたかいいろ染めそめなかひとたり起きおきたりいる
じゅうつき静かしずかたに空気くうきそら半途はんと包んつつんじか落ちおち
云っいっ山向やまむき逃げにげ行かいか
かぜないむらうえいつ落ちついおちついじっと動かうごか靄んもやんいる
そのはやしいろしだい変っかわっ来るくる
酸いしいものいつ甘くあまくなるようたに全体ぜんたい時代じだいつく
ピトロクリぴとろくりたにこのひゃくねんむかし二百にひゃくねんむかしかえっやすやす寂びさびしまう
ひと熟れこなれかお揃えそろえ山の背やまのせ渡るわたるくも見るみる
そのくもある白くしろくなりある灰色はいいろなる
折々おりおり薄いうすいそこからやま透かすか見せるみせる
いつ古いふるいくも心地ここちする
自分じぶんいえこのくもこのたに眺めるながめる都合つごう好くよく小さなちいさなおかうえ立ったっいる
みなみから一面いちめんいえかべあたる
いくねんじゅうつき射ししゃしものどこかしこ鼠色ねずみいろ枯れかれいる西にしはしいちほん薔薇ばら這いはいかかっ冷たいつめたいかべ暖かいあたたかい挟まっはさまっはないくつ着けつけ
大きなおおきなべん卵色たまごいろ豊かゆたかなみ打っうっがくから翻えるひるがえるようくち開けあけままそりところどころ静まり返っしずまりかえっいる
こう薄いうすい日光にっこう吸わすわ空気くうき消えきえ行くいく
自分じぶん
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