薤露行

5/5

五 舟

5
巻けるまけるきぬいろやり突き合わすつきあわすてきさとしべしランスロットらんすろっとその試合しあい二十にじゅう余人よにん騎士きし仆したおし引きひききょぐる間際まぎわ始めはじめわがなのる驚くおどろくひと醒めさめラヴェンともらち出でででたり行く末ゆくすえ勿論もちろんアストラットあすとらっとじゃさん過ぎすぎアストラットあすとらっと帰れるかえれるラヴェンちちいもうと物語るものがたる
ランスロットらんすろっとちち驚きおどろきまゆ張るはる
おんなあなのみかみ挿すさすはないろ顫わふるわ
二十にじゅう余人よにんてき渡り合えるわたりあえるうち何者なにものやり受けうけ損じそんじよろいどうすん下りくだりひだりまたはじめ負うおう深きふかきはじめおんなかたつば呑んのん懸念けねん
くら堪えこらえほどあらなつ暮れくれたき暮れくれ蒼きあおきゆうくさ深きふかきはらのみ行けいけうまひづめ濡れぬれたり二人ふたり一言ひとこと交わさかわさランスロットらんすろっとなん思案しあん沈めるしずめる知らしらわれひる試合しあいまたあるまじき派手やかはでやか偲ぶしのぶかぜ渡るわたるこずえなけれうまくつ鳴らすならすおとのみ高したかしみち分れわかれすじなるひだり切れきれここまでじゅうじゃ老人ろうじん物知りものしりかおいう
ランスロットらんすろっとうまあたまみぎ立て直すたてなおすみぎ みぎシャロットしゃろっとほん街道かいどう十五じゅうご確かたしかあろうこれ老人ろうじん説明せつめいある
そのシャロットしゃろっとほうあとより呼ぶよぶわれ顧みかえりみくつわ鳴らしならし去るさるやむなくわれ従うしたがう不思議ふしぎなるわがうま振り向けふりむけたる前足まえあし躍らしおどらしあやしく嘶けいななけことなり嘶くいななくこえ知らしら夏野なつの末広すえひろ消えきえうまあしつね如くごとくわが手綱たづな思うおもうまま運びはこびランスロットらんすろっとかげよるとも微かかすかなるおく消えきえたりわれくら敲いたたい追うおう追い付いおいついちちいもうとこえ揃えそろえ問うとう
追い付けるおいつける既にすでに遅くおそくあっ乗るのるうまいきやみ押し分けおしわけ白くしろく立ち上るたちのぼるいやうえむちって長きながきみち一散いっさんはせ通すとおすくろきものそれゆるかげていばかりさき現われあらわれたるわれはい逆しまさかしまランスロットらんすろっと呼ぶよぶくろきもの聞かきかざる真似まね行くいく幽かかすか聞えきこえたるくつわおと怪しきあやしき差しさし急げるいそげるようなき容易くたやすく追い付かおいつか漸くようやくこといちていほど逼りせまりたるくろきものよるなか織り込まおりこまたる如くごとくふっ消えるきえる合点がてん行かいかわれえき追うおうシャロットしゃろっと入口いりぐち渡しわたしたる石橋いしばしひづめ砕けよくだけよ乗りのり懸けかけ思えおもえうま何物なにもの躓きつまずき前足まえあし折るおるわれたてがみさか扱いあつかいまえのめる打つうついしうえ心得こころえわれよりさき斃れたおれたるひとよろいそでなりあぶない老人ろうじんまえこと如くごとく叫ぶさけぶ
あぶなきわがうえならわれよりさき倒れたおれたるランスロットらんすろっとことなり倒れたおれたるランスロットらんすろっといもうと魂消たまげゆるほどこえ椅子いすはし握るにぎる
椅子いすあし折れおれたるあら
はしたもとやなぎうらひと住むすむしも見えみえ庵室あんしつある試みこころみ敲けたたけ逃れのがれたる隠士いんしなり幸いさいわい冷たきつめたきひと担ぎかつぎ入るはいるかぶと脱げぬげさえ氷りこおりくすり掘りほりくさ煮るにる隠士いんしつねなりランスロットらんすろっとちち話しはなし半ばなかばわれ投げなげ入るはいる
よみ返しよみかえしたれよみあるひと択ぶえらぶところあらわれ帰りかえりたるランスロットらんすろっとまことわれ帰りかえりたるあら襲わおそわゆめものいうひと如くごとくあらことのみ口走るくちばしるあるとき罪々つみ叫びさけびあるとき王妃おうひギニヴィアぎにゔぃあシャロットしゃろっという隠士いんしこころ込むごむくさ香りかおり煮えにえたるあたま一点いちてん涼気りょうき吹かふか枕辺まくらべわれあら少女しょうじょ思うおもう
一夜いちやあとたぎりたるのう漸くようやく平らぎたいらぎ静かしずかなるむかしかげちらちらこころ映るうつるころランスロットらんすろっとわれ去れされいうこころ許さゆるさ隠士いんし去るさるいうとかくきょうたりさんあさわれ隠士いんしねむり覚めさめ病むやむひと顔色かおいろ今朝けさ如何いかがあら臥所ふしど窺えうかがえ在らあらけんさきにて古壁ふるかべ刻みきざみ残せるのこせるつみわれ追いおいわれつみ追うおうある逃れのがれしかちち聞きききいずこいもうときく
いずこ知らしら尋ぬるたずぬる便りたよりあら茫々ぼうぼう吹くふく夏野なつのかぜ限りかぎり知らしら西東にしひがし通うかようさかい極めきわめがたけれ独りひとり帰り来かえりき隠士いんしいうやまい怠らおこたら去るさるかのひと危うしあやうし狂いくるい走るはしるほうカメロットかめろっとなるべしうつつうち口走れるくちばしれる言葉ことばにてそれ察せさっせゆれわれ確としかと思わおもわ語りかたり終っおわっさかずき盛るもるさけ一息ひといき飲み干しのみほしにじ如きごとき吹くふく
いもうと立ったっわがむろ入るはいる
はなたわむれるるちょうひるがえる見れみれはるうれいあり天下てんか挙げあげ知らしら
去れされ冷やかひややか落ちおちつきさえやみいんるるよい思えおもえ
ふるしげき思えおもえ
うすつばさいかばかりうす思えおもえ
広きひろきくさかげことつめほどしょうきもの潜むひそむ思えおもえ
畳むたたむはね置くおく重きおもき過ぎすぎゆめさえしかるべし
知らしらはらそこある甲斐かいなき縮めちぢめ誘うさそうかぜ砕くくだく危うきあやうき恐るるおそるる淋しかろうさびしかろう
エレーンえれーん長くながく持たもた
エレーンえれーんたて眺めながめいる
ランスロットらんすろっと預けあずけたて眺めながめ暮しくらしいる
そのたてたけ高きたかきおんなまえ一人ひとり騎士きしあいしん誓えるちかえる模様もよう描かえがかいる
騎士きしよろいぎんおんなころもほのおいろ燃えもえくろ近きちかきこん敷くしく
赤きあかきおんなギニヴィアぎにゔぃあなり憐れあわれなるエレーンえれーんゆめ知るしるない
エレーンえれーんたておんな己れおのれ見立てみたてまずけるランスロットらんすろっと思うおもうおりさえある
かくあれ念ずるねんずる思いおもいいつこころうら抜け出でぬけいでかく通りとおりたてひょうあらわれるあろう
かくありあとあらいしずえ一度いちど築けるきずけるうえそらこと重ねかさねそのそらこと未来みらいさえ想像そうぞうやま
重ねかさね上げあげたる空想くうそうまた崩れるくずれる
児戯じぎ積むつむ小石こいしとう蹴返すけかえす如くごとく崩れるくずれる
崩れくずれたるあとわれ帰りかえり見れみれランスロットらんすろっとあら
狂いくるいカメロットかめろっと遠きとおき走れるはしれるひとわがそばあるべき所謂いわゆるはなし
るるともうけいさえ渝らかわら千里せんり繋ぐつなぐ牽きひきつなあろう
ランスロットらんすろっとわれなん誓えるちかえる
エレーンえれーんなみだ溢れるあふれる
なみだなかまた思い返すおもいかえす
ランスロットらんすろっとこそ誓わちかわざれ
一人ひとり誓えるちかえるわれ渝るかわるべくあら
二人ふたりなか成り立つなりたつのみうけいいわ
われわがこころちぎるうけい洩れもれ
このうけいだに破らやぶら思い詰めるおもいつめる
エレーンえれーんほおいろ褪せるあせる
死ぬしぬことおそれしきあらたるあとランスロットらんすろっと逢いあいがたき恐るるおそるる
去れされこの世このよにて逢いあいがたきぶれ未来みらい逢うあうかえって易きやすき思うおもう
罌粟けし散るちるうれいしとのみべから散れちれこそまた咲くさくなつあり
エレーンえれーんしょく断っことわっ
衰えおとろえ春野はるの焼くやくしょうさきむねしんうれいころも堪えこらえたまほね寸々すんずん削るけずる
今までいままで長きながきいのちのみ思えおもえ
よしいつまで貪るむさぼるがんなくとも死ぬしぬいうことゆめさえ見しみしめしあら束の間つかのまはる思いあたれおもいあたれ今日きょうなりつらつら観ずれかんずれ開くひらくつぼみなかはんあり
円くまるく照るてる明月あかつきあす問わとわ淋しさびしからん
エレーンえれーん死ぬしぬよりそと浮世うきよようなきひとある
いまこれまでいのち思い詰めおもいつめたるときエレーンえれーんちちあに枕辺まくらべ招きまねきわがためランスロットらんすろっとぶんたまわれいう
ちちふでかみ取り出でとりいでなんとするひと言の葉ことのは一々いちいち書き付けるかきつける
天が下あめがした慕えしたえひときみひとりなりきみ一人ひとりため死ぬしぬわれ憐れあわれ思えおもえ陽炎かげろう燃ゆるもゆる黒髪くろかみ長きながき乱れみだれつちなるともむね彫るほるランスロットらんすろっとほし変るかわる後の世のちのよまで消えきえあいほのお染めそめたる文字もじつちみず因果いんがじゅくるなし思えおもえまつげ宿るやどるたま写るうつる見れみれ砕けくだけたるきみ面影おもかげ脆くもろくあるわがいのちしかくもろなみだあら基督きりすと知るしる死ぬしぬまできよし乙女おとめなり 書きかき終りおわりたる文字もじ怪しあやし乱れみだれ定かさだかなら
年寄としより顫えふるえたるおいためともため知れしれ
おんなまたいう
いき絶えたえ暖かあたたかなるうちみぎこのぶん握らにぎら給えたまえあし冷えひえ尽しつくしたるあとありある美しきうつくしきころもわれ着飾りきかざり給えたまえ隙間すきまなくくろぬのしき詰めつめたる小船こぶねなかわれ載せのせ給えたまえやま白きしろき薔薇ばら白きしろき百合ゆり採りとり尽しつくしふね投げ入れなげいれ給えたまえふね流しながし給えたまえ かくエレーンえれーん眠るねむる
眠りねむりたる開くひらくなし
ちちあに唯々いい遺言ゆいごん如くごとく憐れあわれなる少女しょうじょ亡骸なきがらふね運ぶはこぶ
古きふるきこうさざなみさえかぜ吹くふくこと知らしらかお平かたいらかある
ふねいまみどりかげ離れはなれ中流ちゅうりゅう漕ぎこぎ出づるいづる
かい操るあやつるただ一人ひとり白きしろきかみ白きしろきひげおう
ゆるく掻くかくみず物憂ものう動いうごいいちかいごとなまり如きごとき光りひかり放つはなつ
ふねなみ浮ぶうかぶ睡蓮すいれん睡れるねむれるなかおと乗り入りのりいりては乗り越しのりこし行くいく
うてな傾けかたむけふね通しとおしたるあと軽くかるく曳くひくなみあしともしばらく揺れゆれはな姿すがたつねせい帰るかえる
押し分けおしわけられ再びふたたび浮き上るうきあがるひょうならたま走らすはしらす
ふね杳然ようぜん何処どこなく去るさる
美しきうつくしき亡骸なきがら美しきうつくしきころも美しきうつくしきはなひと見えみえいちおう載せのせ去るさる
おうものいわ
ただ静かしずかなるなみなか長きながきかいくぐらくぐらす
彫るほるひとむちって起たたたしめたるかい動かすうごかすうでそと活きつきたるところなき如くごとくゆる
見れみれゆきより白きしろき白鳥はくちょう収めおさめたるつばさなみ裂いさい王者おうじゃ如くごとく悠然ゆうぜんみず練りねり行くいく
長きながきくび高くたかく伸しのしたる高きたかき姿すがたあたり払っはらっ恐るるおそるるものありしも見えみえ
うねるりゅう傍目はためふらへさき立ったっふね導くみちびく
ふねいずくまでもととりはね裂けさけたるなみ合わあわ随うしたがう
両岸りょうがんやなぎ青いあおい
シャロットしゃろっとすぎぐるいずくなく悲しきかなしきこえひだりきしより古きふるきみず寂寞じゃくまく破っやぶっ動かうごかなみうえ響くひびく
うつせみうつつ住めすめ絶えたえたるおとあと引いひい引きひきたるまたしばらく絶えたえ
聞くきくもの死せしせエレーンえれーんとも坐るすわるおうのみ
おうみみさえかり
ただ長きながきかいくぐらくぐらする
思うおもうろうなるべし
そら打ち返しうちかえしたる綿めん厚くあつく敷けるしける如くごとく重いおもい
りゅう挟むはさむ左右さゆうやなぎいちほんごとみどりこめ濛々もうもう烟るけぶる
娑婆しゃば冥府めいふさかい立ちたち迷えまよえひとあらそのひとれい並べならべたるこの気色けしきある
たる少女しょうじょふね乗りのり他界たかい行くいく立ちならんたちならん送るおくるあろう
ふねカメロットかめろっと水門すいもん横付けよこづけ流れながれはたと留まるとまる
白鳥はくちょうかげなみ沈んしずんきし高くたかく峙てそばだて楼閣ろうかく黒くくろくみず映るうつる物凄いものすごい
水門すいもん左右さゆう開けあけ石階せっかいうえアーサーあーさーギニヴィアぎにゔぃあまえ城中じょうちゅう男女だんじょ悉くことごとく集まるあつまる
エレーンえれーんかばね凡てすべてかばねうちにて最ももっとも美しいうつくしい
りょうしきかおくもらんるる黄金おうごんかみ埋めうめ笑えるわらえる如くごとく横わるよこたわる
にく付着ふちゃくするあらゆるにく不浄ふじょう拭い去っぬぐいさっれいそのもの面影おもかげ口鼻こうび示せるしめせる朗かほがらかまた極めてきわめて清いきよい
苦しみくるしみ憂いうれい恨みうらみ憤りいきどおり忌わしいまわしきものあとなけれつち帰るかえるひと見えみえ
おう厳かおごそかなるこえにて何者なにもの問うとう
かい休めやすめたる老人ろうじんおうし如くごとくくち開かひらか
ギニヴィアぎにゔぃあはつ石階せっかい下りくだりらんるる百合ゆりはななかよりエレーンえれーんみぎ握るにぎるぶん取り上げとりあげ何事なにごとふう切るきる
悲しきかなしきこえまたみず渡りわたりうつくしこいいろうつろうほそいとふっ波うたなみうたたる如くごとく人々ひとびとみみ貫くつらぬく
読みよみ終りおわりたるギニヴィアぎにゔぃあこしのしふねなかなるエレーンえれーんがく透き徹るすきとおるエレーンえれーんがく顫えふるえたるくちびるつけつつしき少女しょうじょいう
同時どうじいちしずく熱きねつきなみだエレーンえれーん冷たきつめたきほおうえ落つるおつる
十三じゅうさんひと騎士きし見合せみあわせ
5/5