犬と笛

6/6

6
それからしばらくたっ香木こうぼくゆみ孔雀くじゃくはね背負っせおっかみようようかみ長彦ながひこ黒犬くろいぬ背中せなか跨りまたがりながらしろぶちひきいぬ小脇こわきかかえ飛鳥あすか大臣だいじんよう御館おたてそらから舞い下っまいくだっあの二人ふたり年若としわかさむらいたちどんな慌てあわて騒ぎさわぎましたろう
いや大臣だいじんようさえあまり不思議ふしぎ驚きおどろきなっ暫くしばらくまるでゆめようかみ長彦ながひこ凜々りんりんしい姿すがたぼんやり眺めながめいらっしゃいまし
かみ長彦ながひこまずかぶとぬい叮嚀ていねい大臣だいじんようじぎながらわたくしこのくに葛城山かつらぎやまふもと住んすんいるかみ長彦ながひこ申すもうすものございますほうひめよう助けたすけ申しもうしわたくしそこおりますさむらいたちしょく蜃人しんにん土蜘蛛つちぐも退治たいじするゆびいちほん動かしうごかしなり致しいたしませ申し上げもうしあげまし
これ聞いきいさむらいたち何しろなにしろ今までいままでかみ長彦ながひこ話しはなしことさも自分じぶんたち手柄てがららしく吹聴ふいちょうですから二人ふたりともきゅう顔色かおいろ変えかえ相手あいてげん遮りさえぎりながらこれまた思いおもいよらないうそつくやつございますしょく蜃人しんにんくび斬っきっ私たちわたくしたちなら土蜘蛛つちぐも計略けいりゃく見やぶっみやぶっ私たちわたくしたち相違そういございませまこと申し上げもうしあげまし
そこまん中まんなか立ったっ大臣だいじんようどちら云ういうことほんとうとも見きわめみきわめつきならないさむらいたちかみ長彦ながひこ見比べみくらべなさりながらこれお前おまえたち聞いきい見るみるよりほかない一体いったいお前おまえたち助けたすけどっちおとこだっ思うおもうひめようたちほう向いむかいあおぐゆうまし
する二人ふたりひめよう一度いちど御父様おちちさまむね御すぎょすがりなりながら私たちわたくしたち助けたすけましかみ長彦ながひこございますその証拠しょうこあのおとこふさふさ長いながいかみ私たちわたくしたちくしさし置きおきましからどうそれ御覧ごらん下さいくださいまし恥しはずかしそう云いいいなりまし
見るみる成程なるほどかみ長彦ながひこあたまきんくしぎんくし美しくうつくしくきらきら光っひかりっます
もうこうなっさむらいたちほか仕方しかたございませからとうとう大臣だいじんようまえひれ伏しひれふしじつ私たちわたくしたち悪だくみわるだくみあのかみ長彦ながひこ助けたすけひめよう私たちわたくしたち手柄てがらようここ申し上げもうしあげございますこの通りとおり白状はくじょう致しいたしましうえどういのちばかり助けたすけ下さいくださいましがたがたふるえながら申し上げもうしあげまし
それからさきことべつ話しはなしするまでありますまい
かみ長彦ながひこ沢山たくさん褒美ほうび頂いいただいうえ飛鳥あすか大臣だいじんよう婿むこようなりまし二人ふたり若いわかいさむらいたちさんひきいぬ追いまわさおいまわさほうほう御館おたてそと逃げ出しにげだししまいまし
ただどちらひめようかみ長彦ながひこよめさんなりましそれだけ何分なんふんむかしこといまはっきりわかっおりませ
大正たいしょうななねん十二じゅうにつき
6/6