硝子戸の中

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硝子戸がらすとなかからそと見渡すみわたすしもじょ芭蕉ばしょう赤いあかいじつ結っけつっうめもどきえだ無遠慮むえんりょ直立ちょくりつ電信柱でんしんはしらすぐ着くつくそのほかこれ云っいっ数え立てるかぞえたてるほどものほとんど視線しせん入っはいっない
書斎しょさいいるわたくし眼界がんかい極めてきわめて単調たんちょうそうまた極めてきわめて狭いせまいある
そのうえわたくし去年きょねんくれから風邪かぜ引いひいほとんどひょう毎日まいにちこの硝子戸がらすとなかばかり坐っすわっいる世間せけん様子ようすちっとも分らわからない
心持こころもち悪いわるいから読書どくしょあまりない
わたくしただ坐っすわったりたりそのその送っおくっいるだけある
しかしわたくしあたま時々ときどき動くうごく
気分きぶん多少たしょう変るかわる
いくら狭いせまい世界せかいなか狭いせまいなり事件じけん起っおこっ来るくる
それから小さいちいさいわたくし広いひろい世の中よのなか隔離かくりいるこの硝子戸がらすとなか時々ときどきひと入っはいっ来るくる
それまたわたくしとっ思いがけおもいがけないひとわたくし思いがけおもいがけないこと云っいったりためたりする
わたくし興味きょうみ充ちみちもっそれひと迎えむかえたり送っおくったりことさえある
わたくしそんなもの少しすこし書きかきつづけ見ようみよう思うおもう
わたくしそう種類しゅるい文字もじ忙がしいいそがしいひとどれほどつまらなく映るうつるだろう懸念けねんいる
わたくし電車でんしゃなかポッケットぽっけっとから新聞しんぶん出しだし大きなおおきな活字かつじだけ注いそそいいる購読者こうどくしゃまえわたくし書くかくよう閑散かんさん文字もじ列べならべ紙面しめんうずめ見せるみせる恥ずかしいはずかしいものいち考えるかんがえる
これ人々ひとびと火事かじ泥棒どろぼう人殺しひとごろしすべてそのその出来事できごとうち自分じぶん重大じゅうだい思うおもう事件じけんもしくは自分じぶん神経しんけい相当そうとう刺戟しげき得るうる辛辣しんらつ記事きじほか新聞しんぶん取るとる必要ひつよう認めみとめないくらい時間じかん余裕よゆうもたないから
かれ停留所ていりゅうしょ電車でんしゃ待ち合わせるまちあわせる新聞しんぶん買っかっ電車でんしゃ乗っのっいる昨日きのう起っおこっ社会しゃかい変化へんか知っしっそう役所やくしょ会社かいしゃ行き着くいきつく同時どうじポッケットぽっけっと収めおさめ新聞紙しんぶんしことまるで忘れわすれしまわなけれならないほど忙がしいいそがしいから
わたくしいまこれほど切りつめきりつめられ時間じかんしか自由じゆうできないひととおる軽蔑けいべつ冒しおかし書くかくある
去年きょねんから欧洲おうしゅう大きなおおきな戦争せんそう始まっはじまっいる
そうその戦争せんそういつ済むすむとも見当けんとうつかない模様もようある
日本にっぽんその戦争せんそういちしょう部分ぶぶん引き受けひきうけ
それ済むすむ今度こんど議会ぎかい解散かいさんなっ
来るくるべき総選挙そうせんきょ政治界せいじかい人々ひとびととっ大切たいせつ問題もんだいなっいる
べい安くやすくなり過ぎすぎ結果けっか農家のうかきん入らはいらないどこ不景気ふけいき零しこぼしいる
年中ねんじゅう行事ぎょうじ云えいえはる相撲すもう近くちかく始まろうはじまろういる
要するようする世の中よのなか大変たいへん多事たじある
硝子戸がらすとなかじっと坐っすわっいるわたくしなぞちょっと新聞しんぶんかお出せだせないようする
わたくし書けかけ政治家せいじか軍人ぐんじん実業家じつぎょうか相撲すもうきょう押し退けおしのけ書くかくことなる
わたくしだけとてもそれほど胆力たんりょくない
ただはるなん書いかい見ろみろ云わいわから自分じぶん以外いがいあまり関係かんけいないつまらこと書くかくある
それいつまでつづくわたくしふで都合つごう紙面しめん編輯へんしゅう都合つごうきまるから判然はんぜん見当けんとういまつきかねる
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