硝子戸の中

7/10

7
おんな告白こくはく聴いきいいるわたくし息苦しくいきぐるしくくらい悲痛ひつう極めきわめものあっ
彼女かのじょわたくし向っむかっこんな質問しつもんかけ
もし先生せんせい小説しょうせつ書きかきなる場合ばあいそのおんな始末しまつどうなさいます わたくし返答へんとう窮しきゅうし
おんな死ぬしぬほういい思いおもいなりますそれ生きいきいるよう書きかきなります わたくしどちら書けるかける答えこたえ暗にあんにおんな気色けしきうかがっ
おんなもっと判然はんぜん挨拶あいさつわたくしから要求ようきゅうするよう見えみえ
わたくし仕方なししかたなしこう答えこたえ
生きるいきるいうこと人間にんげん中心ちゅうしんてん考えれかんがえれそのまま差支さしつかえないでしょうしかしくしいも気高いけだかいもの一義かずよしおい人間にんげん評価ひょうかすれ問題もんだい違っちがっ来るくる知れしれませ先生せんせいどちら択びえらびなります わたくしまた躊躇ちゅうちょ
黙っだまっおんないうこと聞いきいいるよりほか仕方しかたなかっ
わたくしいま持っもっいるこの美しいうつくしい心持こころもち時間じかんいうものためだんだん薄れうすれ行くいく怖くこわくってたまらないですこの記憶きおく消えきえしまっただ漫然まんぜんたましい抜殻ぬけがらよう生きいきいる未来みらい想像そうぞうするそれ苦痛くつう苦痛くつう恐ろしくおそろしくってたまらないです わたくしおんないま広いひろい世間せけんなかたっ一人ひとり立ったっいちすん身動きみうごきできない位置いちいること知っしっ
そうそれわたくしちからどうするわけ行かいかないほどせっぱつまっ境遇きょうぐうあること知っしっ
わたくしつけようないひと苦痛くつう傍観ぼうかんする位置いち立たたたられじっと
わたくし服薬ふくやく時間じかん計るはかるためきゃくまえ憚からはばからつねたもと時計とけい座蒲団ざふとんそば置くおくくせもっ
もう十一じゅういちから帰りかえりなさいわたくししまいおんな云っいっ
おんないやかお立ち上ったちのぼっ
わたくしまたよる更けふけから送っおくっ行っいっ上げあげましょう云っいっおんなとも沓脱くつぬぎ下りくだり
その時美じびしいつき静かしずかよる残るのこる隈なくくまなく照らしてらし
往来おうらい出るでるひっそりつちうえひびく下駄げたおとまるで聞こえきこえなかっ
わたくし懐手ふところでまま帽子ぼうし被らかぶらおんなあと行っいっ
曲り角まがりかどところおんなちょっと会釈えしゃく先生せんせい送っおくっいただいもったいございます云っいっ
もったいないわけありませ同じおなじ人間にんげんですわたくし答えこたえ
つぎ曲り角まがりかどときおんな先生せんせい送っおくっいただく光栄こうえいございますまた云っいっ
わたくし本当ほんとう光栄こうえい思いおもいます真面目まじめ尋ねたずね
おんな簡単かんたん思いおもいますはっきり答えこたえ
わたくしそんなら死なしな生きいきいらっしゃい云っいっ
わたくしおんなこの言葉ことばどう解釈かいしゃく知らしらない
わたくしそれから一丁いちちょうばかり行っいっまたたくほう引き返しひきかえしある
むせっぽいよう苦しいくるしいはなし聞かさきかさわたくしそのよるかえって人間にんげんらしい好いよい心持こころもち久しぶりひさしぶり経験けいけん
そうそれみこととい文芸ぶんげいうえ作物さくもつ読んよんあと気分きぶん同じおなじものいうことつい
ゆう楽座らくざ帝劇ていげき行っいっ得意とくいなっ自分じぶん過去かこ影法師かげほうしなんなく浅ましくあさましく感ぜかんぜられ
7/10