坑夫

その一人だ。が、こうなっちゃ堕落しているよりほかに道はない。いくら泣いたって、悔んだって堕落しているよりほかに道はない。だから君は今のうち早く帰るがいい。君が堕落すれば、君のためにならないばかりじゃない。――君は親があるか……」 自分はただ一言あると答えた。

第 7 章
「あればなおさらだ。それから君きみは日本人にっぽんにんだろう……」 自分じぶんは黙っだまっていた。
「日本人にっぽんにんなら、日本にっぽんのためになるような職業しょくぎょうについたらよかろう。学問がくもんのあるものが坑夫こうふになるのは日本にっぽんの損そんだ。だから早くはやく帰るかえるがよかろう。東京とうきょうなら東京とうきょうへ帰るかえるさ。そうして正当せいとうな――君きみに適当てきとうな――日本にっぽんの損そんにならないような事ことをやるさ。何なんと云っいってもここはいけない。旅費りょひがなければ、おれが出しだしてやる。だから帰れかえれ。分っわかったろう。おれは山中やまなか組くみにいる。山中やまなか組くみへ来きて安あんさんと聞きゃききゃあすぐ分るわかる。尋ねたずねて来るくるが好いよい。旅費りょひはどうでも都合つごうしてやる」 安あんさんの言葉ことばはこれで終っおわった。
坑夫こうふの数すうは一万いちまん人ひとと聞いきいていた。