草枕

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山路やまじ登りのぼりながらこう考えかんがえ
さとし働けはたらけかく立つたつ
じょう棹させさおさせ流さながされる
意地いじ通せとおせ窮屈きゅうくつ
とかくひと住みすみにくい
住みすみにく高じるこうじる安いやすいところ引き越しひきこしたくなる
どこ越しこし住みすみにくい悟っさとっ生れうまれ出来るできる
ひと作っつくっものかみなけれおにない
やはり向うむこうさんのき両隣りりょうどなりちらちらするただひとある
ただひと作っつくっひと住みすみにくいからとて越すこすくにあるまい
あれ人でなしひとでなしくに行くいくばかり
人でなしひとでなしくにひとよりなお住みすみにくかろう
越すこすことなら住みすみにくけれ住みすみにくいところどれほど寛容かんよう束の間つかのまいのち束の間つかのま住みすみよくなら
ここ詩人しじんいう天職てんしょく出来できここ画家がかいう使命しめい降るふる
あらゆる芸術げいじゅつひと長閑のどかひとこころ豊かゆたかするみこと
住みすみにくきから住みすみにくき煩いわずらい引き抜いひきぬいありがたい世界せかいまのあたり写すうつすあるある
ある音楽おんがく彫刻ちょうこくある
こまか云えいえ写さうつさないよい
ただまのあたり見れみれそこ生きいきうた湧くわく
着想ちゃくそうかみ落さおとさともおと胸裏きょうり起るおこる
丹青たんせい画架がか向っむかっ塗抹とまつせん五彩ごさい絢爛けんらん自からみずから心眼しんがん映るうつる
ただ住むすむかく観じかんじとく霊台れいだい方寸ほうすんカメラかめら澆季ぎょうき溷濁こんだく俗界ぞっかい清くきよくうららか収めおさめ得れえれ足るたる
この無声むせい詩人しじん一句いっくなく無色むしょく画家がかさしなきかく人世じんせい観じかんじ得るうるてんおいかく煩悩ぼんのう解脱げだつするてんおいかく清浄せいじょうさかい出入でいり得るうるてんおいまたこの不同ふどう不二ふじ乾坤けんこん建立こんりゅう得るうるてんおい我利がり私慾しよく覊絆きはん掃蕩そうとうするてんおい千金せんきんよりまんのりきみよりあらゆる俗界ぞっかい寵児ちょうじより幸福こうふくある
住むすむこと二十にじゅうねん住むすむ甲斐かいある知っしっ
二十五にじゅうごねん明暗めいあん表裏ひょうりごとくあたるところきっとかげさす悟っさとっ
三十さんじゅう今日きょうこう思うおもういる
喜びよろこび深きふかきとき憂いうれいよい深くふかく楽みたのしみ大いなるおおいなるほど苦しみくるしみ大きいおおきい
これ切り放そうきりはなそうする持てもて
片づけようかたづけようすれ立たたた
きん大事だいじ大事だいじもの殖えれふえれ寝るねる心配しんぱいだろう
こいうれしい嬉しいうれしいこい積もれつもれこいむかしかえって恋しかろこいしかろ
閣僚かくりょうかた数百すうひゃくまんひとあし支えささえいる
背中せなか重いおもい天下てんかおぶさっいる
うまいもの食わくわ惜しいおしい
少しすこし食えくえ飽き足らあきたら
存分ぞんぶん食えくえあと不愉快ふゆかい
 かんがえここまで漂流ひょうりゅう右足みぎあし突然とつぜん坐りすわりわるい角石かどいしはし踏みふみそんなっ
平衡へいこう保つたもつためすわまえ飛び出しとびだし左足ひだりあし損じそんじ埋め合せうめあわせするともこし具合ぐあいよくほうさんさしほどいわうえおろし
かたかけ絵の具えのぐばこ腋の下わきのしたから躍りおどり出しだしだけ幸いさいわいなんことなかっ
立ち上がるたちあがる向うむこう見るみるみちからひだりほうバケツばけつ伏せふせようみね聳えそびえいる
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少しすこし手前てまえ禿山はげやまいちぐんぬきんでまゆ逼るせまる
禿げはげ側面そくめん巨人きょじんおの削り去っけずりさっするどどき平面へいめんやけたにそこ埋めうめいる
天辺てっぺんいちほん見えるみえる赤松あかまつだろう
えだそらさえ判然はんぜんいる
行く手ゆくてていほど切れきれいる高いたかいところから赤いあかい毛布もうふ動いうごい来るくる見るみる登れのぼれあすこ出るでるだろう
みちすこぶる難義なんぎ
つちならすだけならさほど手間てま入るはいるまいつちなか大きなおおきないしある
つち平らたいらいし平らたいらなら
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雲雀ひばりきっとくもなか死ぬしぬ相違そういない
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その二三にさんなかこんなある
Welookbeforeandafter    Andpineforwhatisnot:  Oursincerestlaughter    Withsomepainisfraught;Oursweetestsongsarethosethattellofsaddestthought.
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動いうごい構わかまわない
画中がちゅう人間にんげん動くうごく見れみれ差しさしない
画中がちゅう人物じんぶつどう動いうごい平面へいめん以外いがいられるものない
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煮えにえ切れきれないくもあたまうえ垂れたれ懸っかかっ思っおもっいつ崩れくずれ出しだし四方しほうただくもうみ怪しまあやしまれるなかからしとしとはるあめ降りふり出しだし
菜の花なのはな疾くとく通りとおり過しすごしいまやまやま行くいくあめいとほとんどきり欺くあざむくくらいから隔たりへだたりどれほどわから
時々ときどきかぜ高いたかいくも吹き払うふきはらうとき薄黒いうすぐろい山の背やまのせ右手みぎて見えるみえることある
なんたにいち隔てへだて向うむこうみゃく走っはしっいるところらしい
ひだりすぐやますそ見えるみえる
深くふかく罩めるこめるあめおくからまつらしいものちょくちょくかお出すだす
出すだす思うおもう隠れるかくれる
あめ動くうごく動くうごくゆめ動くうごくなんなく不思議ふしぎ心持ちこころもち
みち存外ぞんがい広くひろくなっかつたいらからあるくほね折れおれ雨具あまぐ用意よういない急ぐいそぐ
帽子ぼうしから雨垂れあまだれぽたりぽたり落つるおつるころ五六ごろく先きさきからすずおと黒いくろいなかから馬子まごふうあらわれ
ここ休むやすむところないもう十五丁じゅうごちょう行くいく茶屋ちゃやありますだいぶ濡れぬれ まだ十五じゅうごてい振り向いふりむいいるうち馬子まご姿すがた影画かげえようあめつつままたふう消えきえ
ぬかよう見えみえつぶ次第しだい太くふとく長くながくなっいま一筋ひとすじごとかぜ捲かまかれるようまで入るはいる
羽織はおりとくに濡れぬれ尽しつくし肌着はだぎ浸み込んしみこんみず身体しんたい温度おんどなま暖くあたたかく感ぜかんぜられる
気持きもちわるいからぼう傾けかたむけすたすた歩行くあるく
茫々ぼうぼうたるうす墨色すみいろ世界せかいいくじょう銀箭ぎんせん斜めななめ走るはしるなかひたぶる濡れぬれ行くいくわれわれならひと姿すがた思えおもえなるれる
有体ありていなる己れおのれ忘れわすれ尽しつくしじゅん客観きゃっかんつくる始めはじめわれ画中がちゅう人物じんぶつ自然しぜん景物けいぶつ美しきうつくしき調和ちょうわ保つたもつ
ただ降るふるあめ心苦しくこころぐるしく踏むふむあし疲れつかれたる掛けるかける瞬間しゅんかんわれすでになかひとあらひとあら
依然いぜん市井しせいいち豎子じゅし過ぎすぎ
雲煙うんえんどうおもむき入らはいら
落花らっか啼鳥ていちょう情けなさけこころ浮ばうかば
蕭々しょうしょう独りひとり春山はるやま行くいくわれいかに美しきうつくしきなおさらに解せげせ
初めはじめぼう傾けかたむけ歩行ほこう
あとただあしこうのみ見詰めみつめある
終りおわりかたすぼめ恐る恐るおそるおそる歩行ほこう
あめ満目まんもく樹梢じゅしょう揺かわななか四方しほうより孤客こかく逼るせまる
非人情ひにんじょうちときょう過ぎすぎよう
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