満韓ところどころ

2/10

2
しょう蒸気じょうき鉄嶺てつれいまる舷側げんそく上るのぼるいな商船しょうせん会社かいしゃ大河平たいがたいらさんどう総裁そうさいいっしょよう伺いうかがいまし云わいわれる
ふね動きうごき出すだす事務長じむちょう佐治さじきみ総裁そうさい同じおなじふねいでなる聞いきいまし聞かきかれる
船長せんちょうさんサルーンさるーん出口でぐち出逢うであう総裁そうさい同行どうこうはずだれ云っいっようでし質問しつもん受けるうける
こうみんな総裁そうさい総裁そうさい云ういうこう呼ぶよぶきゅう恐ろしくおそろしくなる
仕方しかたないからええ総裁そうさいいっしょはずでしええ総裁そうさい同じおなじふね乗るのる約束やくそくでしたちまち二十五にじゅうごねん用いもちい慣れなれこう倹約けんやく始めはじめ
この倹約けんやく鉄嶺てつれいまる始まっはじまっ大連だいれんから満洲まんしゅう一面いちめん広がっひろがっとうとう安東あんどうけんきょう韓国かんこくまで及んおよんからすくなから恐縮きょうしゅく
総裁そうさいいう言葉ことば世間せけんどう通用つうようする知らしらない旧友きゅうゆう中村なかむらこう代表だいひょうする名詞めいしあまりえら過ぎすぎあまり大袈裟おおげさあまり親しみしたしみなくっあまりかく過ぎすぎいる
いっこうあじない
たとい世間せけんどう云おういおう一人ひとりやはりむかし通りとおりこうこう呼びよび棄てすてたかっ衆寡しゅうかてきやむせっかく友達ともだち他人たにん扱いあつかい五十ごじゅう日間かかん通しとおし遺憾いかんある
ふねなか比較的ひかくてきらくだっ
二百十にひゃくじゅう明るあかる神戸こうべ立ったっから多少たしょう波風なみかぜ無論むろんいでなさるだろう思っおもっちゃんと覚悟かくごきめところ天気てんき存外ぞんがい呑気のんきできもの神戸こうべから大連だいれん着くつくまでたいてい鈍りにぶり返っかえっ
甲板かんぱんうえ若いわかい英吉利いぎりすおとこいぬ抱いいだい穏かおだやか云っいったらうみようすたいてい想像そうぞうれるだろう思うおもう
ありゃなんです事務長じむちょう佐治さじさん聞くきくあれ英国えいこくふく領事りょうじそうです佐治さじさん答えこたえ
ふく領事りょうじ知れしれない美しいうつくしいじゅういち青年せいねんしか思わおもわなかっこれ反しはんしいぬすこぶるみょうかお
もっともブルドッグぶるどっぐから両親りょうしんからすでに普通ふつうかおえん遠いとおいほう違いちがいない
したがっ特にとくにこいつだけ責めるせめる残酷ざんこく一方いっぽうから云ういうまた不思議ふしぎみょうかおいるからやむない
このいぬそのあと大連だいれん渡っわたっ大和やまとホテルほてる投宿とうしゅく
そうちっとも知らしら食堂しょくどう入っはいっめし食っしょくっいる突然とつぜんこのかお出食わしでくわし一驚いっきょう喫しきっし
固よりもとよりいぬ食堂しょくどうじゃないけれどいぬほう間違えまちがえ這入っはいっもの見えるみえる
もっともかれ主人しゅじんその食堂しょくどう
主人しゅじん多数たすう人間にんげんいるところいぬ高声こうしょう談判だんぱんする紳士的しんしてき考えかんがえ見えみえいきなりみょうかおどうぐるみ脇の下わきのした抱えかかえ食堂しょくどうそと行っいっ
その退却たいきゃく模様もようすこぶる優美ゆうびあっ
かれ重いおもいいぬあたかも風呂敷ふろしきつつみごとく安々やすやす小脇こわき抱えかかえ多くおおくひと並んならんいる食卓しょくたく足音あしおと立てたて大股おおまた歩んあゆんそと身体しんたい隠しかくし
そのいぬわん云わいわなかっ
ぐう云わいわなかっ
あたかも弾力だんりょくある暖かいあたたかい器械きかい素直すなお自然しぜんちから従うしたがうようおとなしく抱かかかえか行っいっ
かおたびたび云ういう通りとおりはなはだみょう行状ぎょうじょう至っいたっすこぶる気高いけだかいものあっ
その後そのあとついにこのいぬ逢うあう機会きかいとくなかっ
2/10