道草

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その一枚の反故を大事らしく健三の方へ向け直して見せた。

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御覧ごらんむし食っしょくってる尤ももっともそのはず出産しゅっさんとどけばかりじゃないもう死亡届しぼうとどけまでいるから 結核けっかく死んしんそのなま年月としつきあにくちうち静かしずか読んよん
三十七さんじゅうなな
あに過去かこひとあっ
華美かび前途ぜんともうかれまえ横わっよこたわっなかっ
なん付けつけあと振り返りふりかえりがちかれ対坐たいざいる健三けんぞう自分じぶん進んすすん行くいくべき生活せいかつ方向ほうこうからぎゃく引き戻さひきもどされるよう
淋しいさびしい 健三けんぞうあに道伴どうともなる余りあまり未来みらい希望きぼう多くおおく持ちもち過ぎすぎ
そのくせ現在げんざいかれかなり淋しいさびしいものなかっ
その現在げんざいからじゅん推しおし未来みらい当然とうぜん淋しさびしかるべきことかれよく解っわかっ
あにこの相談そうだん通りとおり島田しまだ要求ようきゅう断っことわっむね健三けんぞう話しはなし
しかしどんな手続きてつづきそれ断っことわっまた先方せんぽうそれ対したいしどんな挨拶あいさつそういう細かいこまかいてんなる全くまったく要領ようりょうとく返事へんじなかっ
何しろなにしろ比田ひでんからそういっからたしかだろう その比田ひでん島田しまだ会いあい行っいっはなし付けつけともまた手紙てがみ会見かいけん始末しまつ知らしら遣っつかっとも健三けんぞう判明はんめいなかっ
多分たぶん行っいっだろう思うおもうそれあのひとことから手紙てがみだけ済ましすまししまっそのところつい聴いきい来るくる忘れわすれ尤ももっともあのあといちかえし姉さんあねさん見舞みまいかたがた行っいっにゃ比田ひでんそう変らかわら留守るすだっつい会うあうこと出来できなかっしかしその姉さんあねさんはなしじゃなん忙がしいいそがしいまだそのままあるようっていっあのおとこ随分ずいぶん無責任むせきにんからことよる行かいかない知れしれない 健三けんぞう知っしっいる比田ひでん無責任むせきにんおとこ相違そういなかっ
その代りかわり頼むたのむなん引き受けるひきうける性質せいしつあっ
ただほかからあたま下げさげ頼またのまれる嬉しくうれしくってもの受合いうけあいたがるかれ頼みたのみほう入らはいらない容易ようい動かうごかなかっ
しかしこんことなんざ島田しまだじか比田ひでんところ持ち込んもちこんからねえ あに暗にあんに比田ひでん自身じしん先方せんぽう出向いでむい話し合はなしあい付けつけなけれ義理ぎり悪いわるいようこといっ
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健三けんぞう馬鹿ばからしいいう顔付かおつき
なけれきっとねん取っとっみなから邪魔じゃまれるだろうって 健三けんぞうまだ黙っだまっ
何しろなにしろ淋しいさびしいないそれあいつことから人情にんじょう淋しいさびしいじゃないよく淋しいさびしい あにお縫おぬいさんところから毎月まいつき彼女かのじょははほうずつ届くとどくことどう知っしっ
なん金鵄きんし勲章くんしょう年金ねんきんなん御藤おふじさん貰っもらってるから島田しまだどこから貰わもらわなくっちゃ淋しくさびしくって堪らたまらなくなっだろう何しろなにしろあのくらい慾張っよくばってるから 健三けんぞうよく淋しさびしがってるひと対したいし大したたいした同情どうじょう起しおこしとくなかっ
三十八さんじゅうはち
事件じけんないまた少しすこし続いつづい
事件じけんないかれ取っとっ沈黙ちんもく過ぎすぎなかっ
かれその時々ときどき己れおのれ追憶ついおく辿るたどるべく余儀よぎなく
自分じぶんあに気の毒きのどくがりつつかれ何時なんじそのあに同じくおなじく過去かこひとなっ
かれ自分じぶん生命せいめい両断りょうだんしよう試みこころみ
する綺麗きれい切り棄てきりすてられべきはず過去かこかえって自分じぶん追掛けおいかけ
かれ行手ぎょうて望んのぞん
しかしかれあしあと歩きあるきがちあっ
そうその行き詰りいきづまり大きなおおきな四角しかくいえ建ったっ
いえはば広いひろい階子段はしごだんついかいあっ
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