道草

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その一枚を開けて内に入った。

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子供こども犬ころいぬころよう塊まっかたまっ
細君さいくん静かしずか閉じとじあおぐむかい眠っねむっ
おとないよう付けつけそのそば坐っすわっかれ心持こころもちくび延ばしのばし細君さいくんかおうえから覗き込んのぞきこん
それからそっと彼女かのじょかおうえ翳しかざし
彼女かのじょくち閉じとじ
かれてのひら細君さいくんはなあなから出るでる生暖かいなまあたたかい呼息こそく微かかすか感ぜかんぜられ
その呼息こそく規則きそく正しかっただしかっ
また穏やかおだやかだっ
かれ漸くようやく出しだし引いひい
するもういち細君さいくん呼んよんなけれまだ安心あんしん出来できないいうかれむね衝いつい起っおこっ
けれどかれ直そなおそ衝動しょうどう打勝っうちかっ
つぎかれまた細君さいくんかた懸けかけ再びふたたび彼女かのじょ揺り起そうゆりおこそうそれやめ
大丈夫だいじょうぶだろう かれ漸くようやく普通ふつうひと断案だんあん帰着きちゃくすること出来でき
しかし細君さいくん病気びょうき対したいし神経しんけい鋭敏えいびんなっいるかれそれ何人なんにんこういう場合ばあい取らとらなけれならない尋常じんじょう手続きてつづきよう思わおもわある
細君さいくん病気びょうき熟睡じゅくすい一番いちばんくすりあっ
長時間ちょうじかん彼女かのじょそば坐っすわっ心配しんぱいそうそのかお見詰めみつめいる健三けんぞうなんより有難いありがたいその眠りねむり静かしずか彼女かのじょまぶたうえ落ちおちかれてんから降るふる甘露かんろまのあたり見るみるようつね
しかしその眠りねむりまた余りあまり長くながく続きつづき過ぎるすぎる今度こんど自分じぶん視線しせんから隠さかくさ彼女かのじょかえって不安ふあんしゅなっ
ついに睫毛まつげ鎖しとざしいるおく見るみるためかれ正体しょうたいなく入っはいっ細君さいくんわざわざ揺り起しゆりおこし見るみること折々おりおりあっ
細君さいくんもっと置いおいくれれ好いよいいう訴えうったえ疲れつかれ顔色かおいろ現わしあらわし重いおもいまぶた開くひらくかれその始めはじめ後悔こうかい
しかしかれ神経しんけいこんな気の毒きのどく真似まねまで彼女かのじょ実在じつざい確かめたしかめなけれ承知しょうちなかっある
やがてかれころも着換えきかえ自分じぶんゆか入っはいっ
そう濁りにごりながら動いうごいいるようかれあたま静かしずかよる支配しはい任せまかせ
よるその濁りにごり清めきよめくれる余りあまりあん過ぎすぎしかし騒がしいさわがしいその動きうごき止めるとめる充分じゅうぶん静かしずかあっ
翌朝よくあさかれ自分じぶん呼ぶよぶ細君さいくんこえ覚ましさまし
貴夫たかおもう時間じかんです まだゆか離れはなれない細君さいくん延ばしのばしかれ枕元まくらもとから取っとったもと時計とけい眺めながめ
下女げじょ俎板まないたうえなん刻むきざむおと台所だいどころほう聞こえきこえ
おんなもう起きおきてるええ先刻せんこく起しおこし行っいっです 細君さいくん下女げじょ起しおこし置いおいまたゆかなか這入っはいっある
健三けんぞうすぐ起き上がっおきあがっ
細君さいくん同時どうじ立ったっ
昨夜さくやこと二人ふたりともまるで忘れわすれよう何になんにいわなかっ
五十二ごじゅうに
二人ふたり自分じぶんたちこの態度たいど対したいしなん注意ちゅうい省察せいさつ払わはらわなかっ
二人ふたり二人ふたり特有とくゆう因果いんが関係かんけい有っあっいること冥々めいめい自覚じかく
そうその因果いんが関係かんけい一切いっさい他人たにん全くまったく通じつうじないいうこと能くよく呑み込んのみこん
からことじょう知らしらない第三者だいさんしゃ自分じぶんたちあるいはへん映りうつりまいいう疑念ぎねんさえ起さおこさなかっ
健三けんぞう黙っだまっそとれい通りとおり仕事しごと
しかしその仕事しごと真際まぎわなかかれ突然とつぜん細君さいくん病気びょうき想像そうぞうすることあっ
かれまえゆめいるよう細君さいくん黒いくろい不意ふい浮んうかん
するかれすぐ自分じぶん立ったっいる高いたかいだんから降りふりたく帰らかえらなけれならないよう
あるいはいまたくからむかえ来るくるよう心持こころもちなっ
かれ広いひろいむろ片隅かたすみしん向うむこう突当りつきあたりある遠いとおい戸口とぐち眺めながめ
かれ仰向いあおむいかぶと鉢金はちがね伏せふせよう高いたかいまる天井てんじょう眺めながめ
かりうるし塗り上げぬりあげ角材かくざいいくだん組み上げくみあげ高いたかいもの一層いっそう高くたかく見えるみえるよう工夫くふうその天井てんじょう小さいちいさいかれこころ包むつつむ足りたりなかっ
最後さいごかれ自分じぶんした黒いくろいあたま並べならべ神妙しんみょうかれいうこと聴いきいいる多くおおく青年せいねんうえ落ちおち
そうまた卒然そつぜん現実げんじつ帰るかえるべくかれから余儀よぎなく
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かれこの老人ろうじん因業いんごう強慾ごうよくおとこ思っおもっ
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