虞美人草

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十四

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電車でんしゃ赤いあかいさつ卸しおろしぶう鳴っなっ来るくる
入れ代っいれかわっあとから町内ちょうないかぜ鉄軌てっきうえ追いおい捲くまくって去るさる
按摩あんますき見計っみはからっ恐る恐るおそるおそる向側むかいがわ渡るわたる
茶屋ちゃや小僧こぞううす挽きひきながら笑うわらう
はたぶり着るきるヘルへる織目おりめほこりいっぱい溜ったまっ黄色きいろぼけいる
古本屋ふるほんやから洋服ようふく来るくる
鳥打帽とりうちぼう寄席よせまえ立ったっいる
今晩こんばん語り物かたりもの塗板とばん白くしろくかいある
そらはりせんだらけある
いちはねとび見えみえ
うえせいなるだけしたすこぶる雑駁ざっぱく世界せかいある
おいおい大きなおおきなこえあとから呼ぶよぶ
じゅうよん夫人ふじんちょっと振り向いふりむいまま行くいく
おい 今度こんどしるしきずなてん向いむかい
呼ばよば本人ほんにん知らしら来るくるひと避けさけ早足はやあし行くいく
抜きぬきせり飛んとんりょう人力じんりき遮ぎらさえぎらますます遠くとおくなる
宗近むねちかきみむね出しだしはせけ出しけだし
寛くひろくあわせ羽織はおりあし下すくだすたんび踊るおどる
おいあとから懸けるかける
かたぴたり留まるとまるとも小野おのさん細面ほそおもて斜めななめ見えみえ
両手りょうて塞がっふさがっいる
おい懸けかけままかた振るふる
小野おのさん振らふらながら向き直っむきなおっ
だれ思っおもったら失敬しっけい 小野おのさん帽子ぼうしままていねい会釈えしゃく
両手りょうて塞がっふさがっいる
なん考えかんがえてるいくら呼んよん聴えきこえないそうでしちっともつかなかっ急いいそいでるようしかも地面じめんうえ歩いあるいないよう少しすこしみょうなんきみ歩行ほこうほう二十にじゅう世紀せいきからハハハハははははそれ新式しんしき歩行ほこうほうなん片足かたあししん片足かたあしきゅうよう実際じっさいこう云ういうもの提げさげいる歩行ほこうにくいから 小野おのさん両手りょうてまえほう出しだしこの通りとおり云わいわばかり自分じぶんからしたほう着けつけ見せるみせる
宗近むねちかきみ自然しぜんこしからした視線しせん移すうつす
なんそれこっちかみ屑籠くずかごこっち洋灯ようとうだいそんなハイカラはいから形姿けいし大きなおおきなかみ屑籠くずかごなんぞ提げさげてるからみょうみょう仕方しかたない頼またのまものから頼またのまみょうなる感心かんしんきみかみ屑籠くずかご提げさげ往来おうらい歩くあるくだけ義侠ぎきょうこころある思わおもわなかっ 小野おのさん黙っだまっわらいながら御辞儀ごじぎ
どこ行くいくこれ持っもっそれ持っもっ帰るかえるいいえ頼またのまから買っかっ行っいっやるですきみぼくどっち行くいく 小野おのさん内心ないしん少々しょうしょう当惑とうわく
急いいそいいるようしかも地面じめんうえ歩行ほこうないよう宗近むねちかきみ云っいっまさに現下げんか状態じょうたいよくてき合っあっ小野おのひょうある
くつ踏むふむ大地だいち広くひろくある堅くかたくあるしかしなんなく踏みふみ心地ここち確かたしかない
かかわら急ぎいそぎたい
気楽きらく宗近むねちかきみなど逢っあっ立話たちばなしするさえ難義なんぎある
いっしょあるこう云わいわれるなおさら困るこまる
つねさえ宗近むねちかきみ捕まるつかまるなんなく不安ふあんある
宗近むねちかきみ藤尾ふじお関係かんけい知るしるよう知らしらよう自分じぶん藤尾ふじお関係かんけい成り立っなりたっしまっ
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人情にんじょう気の毒きのどくある
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逢えあえ隔意かくいなくはなしする
冗談じょうだん云ういう
笑うわらう
男子だんし本領ほんりょう説くとく
東洋とうよう経綸けいりん論ずるろんずる
もっともこいこと余りあまり語らかたら
語らかたら云わいわよりむしろ語れかたれ知れしれ
宗近むねちかきみ恐らくおそらくこい真相しんそう解せげせおとこだろう
藤尾ふじおおっと不足ふそくある
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気の毒きのどく自我じが没しぼっし言葉ことばある
自我じが没しぼっし言葉ことばあるからありがたい
小野おのさんこころうち宗近むねちかきみ気の毒きのどく思っおもっいる
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進むすすむ怖いこわい
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万事ばんじ商量しょうりょうするもの一本調子いちぽんちょうしひと羨ましうらやましがる
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行くいくはる暮れるくれる
きぬごとき浅黄あさぎまくふわりふわりいくばいそら離れはなれうえ被さっかぶさっくる
払い退けるはらいのけるかぜ見えみえ往来おうらい夕暮ゆうぐれなすまま静まり返っしずまりかえっ蒼然そうぜんたる大地だいちいろ刻々こっこくつるって来るくる
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黄昏たそがれ細長くほそながくいえいえ落ちおち鎖さささもんごとくぐる
部屋へやなかなおさら暗いくらいだろう
曲っきょくっ左側ひだりがわさんのきまで
門構もんがまえ云ういうつけられない
往来おうらいわずか仕切るしきる格子戸こうしとそろり明けるあけるなかほのくらく近づくちかづくよい一段いちだん刻んきざんした降りふりよう心持こころもちする
御免ごめん云ういう
静かしずかこえ落つおつはる調子ちょうし乱さみださほどおだやかある
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小野おのさんていねいぼう脱いぬい無言むごんまま挨拶あいさつする
英吉利いぎりすかり新式しんしきあたまびょうたる過去かこまえ落ちおち
けい何十なんじゅうさしえん描いえがい周囲しゅういてつ格子こうし嵌めはめばこいくつなくさげる
運命うんめい玩弄がんろうわれさきとこばこ這入るはいる
えん廻りまわり出すだす
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