虞美人草

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燐寸まっち擦るすることいちすんやみ入るはいる
いくだん彩錦あやきん捲りめくり終れおわれ無地むじさかいなす
春興はるきょう二人ふたり青年せいねん尽きつき
きつねそで天下てんか行くいくもの日記にっきふところひゃくねんうれい抱くいだくものとも帰程上るのぼる
古きふるきてら古きふるきしゃかみもりふつおか掩うおおういそぐこと解せげせきょうようやく暮れくれ
倦怠けんたいるい夕べゆうべある
消えきえ行くいくすべてものうえほしばかり取り残さとりのこさそれすら判然はんぜん映らうつら
瞬くしばたたくそらなかどろん溶けとけ行こういこうする
過去かここの眠れねむれおくから動きうごき出すだす
一人ひとり一生いっしょうひゃく世界せかいある
あるつち世界せかい入りいりあるかぜ世界せかい動くうごく
またある世界せかいなまぐさあめ浴びるあびる
一人ひとり世界せかい方寸ほうすん纏めまとめたる団子だんごほか清濁せいだく混じこんじたる団子だんご層々そうそうそうれんってせんひとせんじつ世界せかいかつげんする
個々ここ世界せかい個々ここ中心ちゅうしん因果いんが交叉こうさてん据えすえ分相応ぶんそうおう円周えんしゅうみぎ劃しかくしひだり劃すかくす
中心ちゅうしんより画きえがき去るさるえん飛ぶとぶがごとくに速かすみやかこい中心ちゅうしんより振りふり来るくる円周えんしゅうあと空裏くうり焼くやく
あるもの道義どうぎいと引いひい動きうごきあるもの奸譎かんきつほのめかし回るまわる
縦横じゅうおう前後ぜんご上下じょうげ四方しほう乱れ飛ぶみだれとぶ世界せかい世界せかい喰い違うくいちがうときはたこしきゃくここふね同じゅうおなじゅう
甲野こうのさん宗近むねちかきみ三春みはる行楽こうらくきょう尽きつきひがし帰るかえる
どう先生せんせい小夜子さよこ眠れるねむれる過去かこ振り起しふりおこしひがし行くいく
別世界べつせかいはちはつよる汽車きしゃはしなく喰い違っくいちがっ
わが世界せかいわが世界せかい喰い違うくいちがうときはら切るきることある
自滅じめつすることある
わが世界せかいほか世界せかい喰い違うくいちがうとき二つながらふたつながら崩れるくずれることある
破けやぶけ飛ぶとぶことある
あるいははつねつ曳いひいきょくうち物別れものわかれなることある
凄まじすさまじ喰い違いくいちがいほう生涯しょうがい一度いちど起るおこるならわれまく引くひく舞台ぶたい立つたつことなくからなる悲劇ひげき主人公しゅじんこうある
てんより賜わるたまわる性格せいかくこの始めはじめだいいちおい躍動やくどうする
はちはつよる汽車きしゃ喰い違っくいちがっ世界せかいさほど猛烈もうれつものない
しかしただ逢うあうただ別れるわかれるそでだけえんならほし深きふかきはるよるさえ寂びさびたるななじょうさして喰い違うくいちがうほど必要ひつようあるまい
小説しょうせつ自然しぜん彫琢ちょうたくする
自然しぜんそのもの小説しょうせつなら
世界せかい絶えたえざるごとく続かつづかざるごとくゆめごとくまぼろしごとく二百にひゃくさと長きながきくるまうち喰い違っくいちがっ
二百にひゃくさと長きながきくるまうし乗せようのせよううま乗せようのせよういかなるひと運命うんめいいかにひがしほう搬びはこび去ろうさろうさらに無頓着むとんちゃくある
畏れおそれ鉄輪てつりんごとりてん
あと驀地まっしぐらやみ衝くつく
離れはなれ合うあう待ちまちかおなる行いおこない帰るかえるかいからたび馴れなれ徂徠そらいざる一様いちよう束ねたばねことごとく土偶どぐうごとく遇待する
よるこそ見えみえ熾んさかん黒煙こくえん吐きはきつつある
眠るねむるよる生けいけもの提灯ちょうちんみなななじょう向っむかっ動いうごい来るくる
梶棒かじぼう下りるおりるとき黒いくろいかげきゅう明かるくあかるくなっ待合まちあい入るはいる
黒いくろいかげ暗いくらいなかから続々ぞくぞく現われあらわれ出るでる
場内じょうない生きいき黒いくろいかげ埋まっうまっしまう
残るのこる京都きょうと定めてさだめて静かしずかだろう思わおもわれる
きょう活動かつどうななじょういちてんあつめあつめたる活動かつどうせん二千にせん世界せかいじゅういちたば夜明よあけまであかるい東京とうきょう推しおし出そうでそうため汽車きしゃしきりけむり吐きはきつつある
黒いくろいかげなだれ始めはじめ
一団いちだん塊まりかたまりばらばら解れわかれてんなる
てんみぎひだり動くうごく
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する口笛くちぶえ遥かはるか後ろうしろ鳴っなっ
くるまごとり動くうごく
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むろなかざわついくる
明かるいあかるい世界せかいはせ抜けぬけ汽車きしゃ沼津ぬまづいき入れるいれる
かお洗うあらう
まどからにく落ちおちかお半分はんぶん出るでる
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どう先生せんせいみぎ若干じゃっかん銀貨ぎんか握っにぎっへぎおり取るとるひだり引き換ひきかえ出すだす
ちゃ部屋へやなかむすめ注いそそいいる
どうおりふた取るとる白いしろい飯粒めしつぶうら着いついくる
なか長芋ながいも白茶しらちゃ寝転んねころんいる傍らかたわらいちかた玉子焼たまごやき黄色くきいろく圧し潰さおしつぶされよう苦し紛れくるしまぎれくびだけめしさかい突き込んつきこんいる
まだ食べたべたくない小夜子さよこはし執らとらおりごとした置くおく
やあ先生せんせい茶碗ちゃわんむすめから受取っうけとっひざうえおり突き立てつきたててはし眺めながめながらぐっ飲むのむ
もうじかですああもうわけない長芋ながいもひげほう動きうごき出しだし
今日きょういい天気てんきですああ天気てんき仕合せしあわせ富士ふじ奇麗きれい見えみえ長芋ながいもひげからおりなか這入るはいる
小野おのさん宿やどさがせ置いおい下すっくだすっでしょううんさがせさがせない先生せんせいくち喫飯返事へんじ兼勤けんきんする
食事しょくじしばらく継続けいぞくする
さあ食堂しょくどう行こういこう宗近むねちかきみ隣りとなり車室しゃしつ米沢よねざわかすりえり掻き合せるかきあわせる
背広せびろ甲野こうのさんひょろ長くひょろながく立ち上がったちあがっ
通り道とおりみち転がっころがっいる手提てさげ革鞄かわかばん跨いまたい甲野こうのさん振り返っふりかえっおい蹴爪けづめずく危ないあぶない注意ちゅうい
硝子戸がらすと押し開けおしあけ隣りとなり車室しゃしつあし踏み込んふみこん甲野こうのさん真直まっすぐ抜けるぬける中途ちゅうとまで宗近むねちかきみ後ろうしろからぐい背広せびろしり引っ張っひっぱっ
御飯ごはん少しすこし冷えひえます冷えひえてるいいかた過ぎすぎ阿爺あやようねん取るとるどう硬いかたいむね痞えつかえいけないちゃ上がっあがったら注ぎそそぎましょう 青年せいねん無言むごんまま食堂しょくどう抜けぬけ
ごとよるごと入り乱れいりみだれじん十方じっぽう飛びとび交わすかわすしょう世界せかいひろし天涯てんがい行きいき尽しつくししかもじんくるなし思わおもわるるなか絹糸けんしほそ厭わいとわ植えつけうえつけかいこたまご並べるならべるごとくよんひと小宇宙しょううちゅうこころなき汽車きしゃうち行くいく夜半やはん背中せなか合せあわせ知らしらかお並べならべられ
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たがいぶたもっ自任じにんいるなあ甲野こうのさん少々しょうしょう情けななさけなそう白いしろいあぶらあじ頬張るほおばる
ぶたいいどう不思議ふしぎ猶太なおふとしひとぶた食わくわそう甲野こうのさん突然とつぜん超然ちょうぜんたること云ういう
猶太なおふとしひとともかくあのおんな少しすこし不思議ふしぎあんまり逢うあうからかいうん給仕きゅうじ紅茶こうちゃ持っもっ来いこいぼくコフィーこふぃー飲むのむこのぶた駄目だめ甲野こうのさんまたおんな外しはずししまう
これなんへん逢うあう一遍いちぺんへんさんへんなんさんへんばかり逢うあう小説しょうせつならこれえんなっ事件じけん発展はってんするところこれだけまあ無事ぶじらしいから云っいっなり甲野こうのさんコフィーこふぃーぐい飲むのむ
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甲野こうのさん黙っだまっいる
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