こころ

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わたくしつきすえ東京とうきょう帰っかえっ
先生せんせい避暑地ひしょち引き上げひきあげそれよりずっとまえあっ
わたくし先生せんせい別れるわかれるこれから折々おりおりたく伺っうかがっざんす聞いきい
先生せんせい単簡たんかんただええいらっしゃいいっだけあっ
その時分じぶんわたくし先生せんせいよほど懇意こんいなっつもり先生せんせいからもう少しすこしかな言葉ことば予期よき掛っかかっある
それこのもの足りたりない返事へんじ少しすこしわたくし自信じしん傷めいため
わたくしこういうことよく先生せんせいから失望しつぼうられ
先生せんせいそれ付いついいるようありまた全くまったく付かつかないようあっ
わたくしまた軽微けいび失望しつぼう繰り返しくりかえしながらそれため先生せんせいから離れはなれ行くいくなれなかっ
むしろそれ反対はんたい不安ふあん揺かわななかれるたびもっとまえ進みすすみたくなっ
もっとまえ進めすすめわたくし予期よきするあるものいつまえ満足まんぞく現われあらわれ来るくるだろう思っおもっ
わたくし若かっわかかっ
けれどすべて人間にんげん対したいし若いわかいこう素直すなお働こうはたらこう思わおもわなかっ
わたくしなぜ先生せんせい対したいしだけこんな心持こころもち起るおこる解らわからなかっ
それ先生せんせい亡くなっなくなっ今日きょうなっ始めはじめ解っわかっ
先生せんせい始めはじめからわたくし嫌っいやっなかっある
先生せんせいわたくし示ししめし時々ときどき素気ないそっけない挨拶あいさつ冷淡れいたん見えるみえる動作どうさわたくし遠ざけようとおざけようする不快ふかい表現ひょうげんなかっある
傷ましいいたましい先生せんせい自分じぶん近づこうちかづこうする人間にんげん近づくちかづくほど価値かちないものから止せよせいう警告けいこく与えあたえある
ほか懐かしみなつかしみ応じおうじない先生せんせいほか軽蔑けいべつするまえまず自分じぶん軽蔑けいべつものみえる
わたくし無論むろん先生せんせい訪ねるたずねるつもり東京とうきょう帰っかえっ
帰っかえっから授業じゅぎょう始まるはじまるまでまだ週間しゅうかん日数にっすうあるそのうち一度いちど行っいっおこう思っおもっ
しかし帰っかえっさん経つたつうち鎌倉かまくら気分きぶん段々だんだん薄くうすくなっ
そうそのうえ彩らいろどられる大都会だいとかい空気くうき記憶きおく復活ふっかつ伴うともなう強いつよい刺戟しげきとも濃くこくわたくしこころ染め付けそめつけ
わたくし往来おうらい学生がくせいかお見るみるたび新しいあたらしい学年がくねん対するたいする希望きぼう緊張きんちょう感じかんじ
わたくししばらく先生せんせいこと忘れわすれ
授業じゅぎょう始まっはじまっいちカ月かげつばかりするわたくしこころまた一種いっしゅ弛みたるみでき
わたくしなん不足ふそくかお往来おうらい歩きあるき始めはじめ
物欲しものほしそう自分じぶんむろなか見廻しみまわし
わたくしあたま再びふたたび先生せんせいかお浮いうい
わたくしまた先生せんせい会いあいたくなっ
始めはじめ先生せんせいたく訪ねたずね先生せんせい留守るすあっ
度目どめ行っいっつぎ日曜にちよう覚えおぼえいる
晴れはれそら沁みしみ込むごむよう感ぜかんぜられる好いよい日和ひよりあっ
その先生せんせい留守るすあっ
鎌倉かまくらわたくし先生せんせい自身じしんくちからいつ大抵たいていたくいるいうこと聞いきい
むしろ外出がいしゅつ嫌いきらいいうこと聞いきい
会えあえなかっわたくしその言葉ことば思い出しおもいだし理由りゆうない不満ふまんどこ感じかんじ
わたくしすぐ玄関先げんかんさき去らさらなかっ
下女げじょかお少しすこし躊躇ちゅうちょそこ立ったっ
このまえ名刺めいし取り次いとりつい記憶きおくある下女げじょわたくし待たしまたしおいまたうちはいっ
する奥さんおくさんらしいひと代っかわっ
美しいうつくしい奥さんおくさんあっ
わたくしそのひとからていねい先生せんせい出先でさき教えおしえられ
先生せんせい例月れいげつそのなる雑司ヶ谷ぞうしがや墓地ぼちある或るあるふつはな手向けたむけ行くいく習慣しゅうかんそうある
たったいまばかり十分じゅうふんなるならないございます奥さんおくさん気の毒きのどくそういっくれ
わたくし会釈えしゃくそと
賑かにぎやかまちほういちていほど歩くあるくわたくし散歩さんぽがてら雑司ヶ谷ぞうしがや行っいっみるなっ
先生せんせい会えるあえる会えあえないいう好奇心こうきしん動いうごい
それすぐかかと回らしまわらし
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