或阿呆の一生

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十二 軍港

第 12 章
潜航艇せんこうていの内部ないぶは薄暗うすぐらかつた。
彼かれは前後ぜんご左右さゆうを蔽へいつた機械きかいの中なかに腰こしをかがめ、小さいちいさい目め金きんを覗いのぞいてゐた。
その又また目め金きんに映えいつてゐるのは明るいあかるい軍港ぐんこうの風景ふうけいだつた。
「あすこに『金剛こんごう』も見えるみえるでせう。
」 或ある海軍かいぐん将校しょうこうはかう彼かれに話しかけはなしかけたりした。
彼かれは四角いしかきいレンズれんずの上うえに小さいちいさい軍艦ぐんかんを眺めながめながら、なぜかふと阿蘭陀おらんだ芹せりを思ひ出しおもひだした。
一人前いちにんまえ三十さんじゅう銭せんのビイフびいふ・ステエクの上うえにもかすかに匂つにおつてゐる阿蘭陀おらんだ芹せりを。
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