或阿呆の一生

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三十六 倦怠

第 36 章
彼かれは或ある大学生だいがくせいと芒ぼう原はらの中なかを歩いあるいてゐた。
「君きみたちはまだ生活せいかつ慾よくを盛さかんに持つもつてゐるだらうね?」「ええ、――だつてあなたでも……」「ところが僕ぼくは持つもつてゐないんだよ。制作せいさく慾よくだけは持つもつてゐるけれども。」 それは彼かれの真情しんじょうだつた。
彼かれは実際じっさいいつの間まにか生活せいかつに興味きょうみを失つうしなつてゐた。
「制作せいさく慾よくもやつぱり生活せいかつ慾よくでせう。」 彼かれは何なんとも答へこたえへなかつた。
芒ぼう原はらはいつか赤いあかい穂ほの上うえにはつきりと噴火山ふんかさんを露ろし出しだした。
彼かれはこの噴火山ふんかさんに何なんか羨望せんぼうに近いちかいものを感じかんじた。
しかしそれは彼かれ自身じしんにもなぜと云ふいふことはわからなかつた。
……
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