或阿呆の一生

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四 東京

第 4 章
隅田川すみだかわはどんより曇くもりつてゐた。
彼かれは走そうつてゐる小しょう蒸汽じょうきの窓まどから向うむこう島しまの桜さくらを眺めながめてゐた。
花はなを盛さかんつた桜さくらは彼かれの目めには一列いちれつの襤褸ぼろのやうに憂欝ゆううつだつた。
が、彼かれはその桜さくらに、――江戸えど以来いらいの向うむこう島しまの桜さくらにいつか彼かれ自身じしんを見出しみだしてゐた。
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