或阿呆の一生

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二十七 スパルタ式訓練

第 27 章
彼かれは彼かれの友だちともだちと或ある裏町うらまちを歩いあるいてゐた。
そこへ幌ほろをかけた人力車じんりきしゃが一いち台だい、まつ直じかに向うむこうから近づいちかづいて来きた。
しかもその上うえに乗のりつてゐるのは意外いがいにも昨夜さくやの彼女かのじょだつた。
彼女かのじょの顔かおはかう云ふいふ昼ひるにも月つきの光ひかりの中なかにゐるやうだつた。
彼かれ等とうは彼かれの友だちともだちの手前てまえ、勿論もちろん挨拶あいさつさへ交さこうさなかつた。
「美人びじんですね。」 彼かれの友だちともだちはこんなことを言ついつた。
彼かれは往来おうらいの突き当りつきあたりにある春はるの山やまを眺めながめたまま、少しすこしもためらはずに返事へんじをした。
「ええ、中々なかなか美人びじんですね。」
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