或阿呆の一生

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三十二 喧嘩

第 32 章
彼かれは彼かれの異母いぼ弟おとうとと取り組みとりくみ合あわせひの喧嘩けんかをした。
彼かれの弟おとうとは彼かれの為ために圧迫あっぱくを受けうけ易いやすいのに違ひちがひなかつた。
同時どうじに又また彼かれも彼かれの弟おとうとの為ために自由じゆうを失つうしなつてゐるのに違ひちがひなかつた。
彼かれの親戚しんせきは彼かれの弟おとうとに「彼かれを見み慣かんへ」と言ひいひつづけてゐた。
しかしそれは彼かれ自身じしんには手足てあしを縛らしばられるのも同じおなじことだつた。
彼かれ等とうは取り組みとりくみ合あわせつたまま、とうとう縁先えんさきへ転げころげて行つおこなつた。
縁先えんさきの庭にわには百日紅さるすべりが一いち本ほん、――彼かれは未だいまだに覚えおぼえてゐる。
――雨あめを持つもつた空そらの下したに赤あか光りひかりに花はなを盛り上げもりあげてゐた。
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