或阿呆の一生

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十三 先生の死

第 13 章
彼かれは雨上りあめあがりの風かぜの中なかに或ある新らしいあたらしい停車場ていしゃじょうのプラツトフオオムを歩いあるいてゐた。
空そらはまだ薄暗うすぐらかつた。
プラツトフオオムの向うむこうには鉄道てつどう工夫くふうが三四さんよん人ひと、一斉いっせいに鶴嘴つるはしを上下じょうげさせながら、何なんか高いたかい声こえにうたつてゐた。
雨上りあめあがりの風かぜは工夫くふうの唄うたや彼かれの感情かんじょうを吹きふきちぎつた。
彼かれは巻煙草まきたばこに火ひもつけずに歓びよろこびに近いちかい苦しみくるしみを感じかんじてゐた。
「センセイせんせいキトクきとく」の電報でんぽうを外套がいとうのポケツトへ押しこんおしこんだまま。
…… そこへ向うむこうの松山まつやまのかげから午前ごぜん六ろく時じの上りのぼり列車れっしゃが一列いちれつ、薄いうすい煙けむりを靡かなびきかせながら、うねるやうにこちらへ近づきちかづきはじめた。
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