或阿呆の一生

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四十五 Divan

第 45 章
Divanはもう一度いちど彼かれの心こころに新しいあたらしい力ちからを与へよあたへようとした。
それは彼かれの知らしらずにゐた「東洋的とうようてきなゲエテ」だつた。
彼かれはあらゆる善悪ぜんあくの彼岸ひがんに悠々ゆうゆうと立つたつてゐるゲエテを見み、絶望ぜつぼうに近いちかい羨ましうらやましさを感じかんじた。
詩人しじんゲエテは彼かれの目めには詩人しじんクリストくりすとよりも偉大いだいだつた。
この詩人しじんの心こころにはアクロポリスあくろぽりすやゴルゴタごるごたの外そとにアラビアあらびあの薔薇ばらさへ花はなをひらいてゐた。
若しもしこの詩人しじんの足あとあしあとを辿るたどる多少たしょうの力ちからを持つもつてゐたらば、――彼かれはデイヴアンでいゔあんを読みよみ了りおわり、恐しいおそろしい感動かんどうの静せいまつた後あと、しみじみ生活せいかつ的まと宦官かんがんに生まれうまれた彼かれ自身じしんを軽蔑けいべつせずにはゐられなかつた。
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