或阿呆の一生

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十七 蝶

第 17 章
藻もの匂においの満ちみちた風かぜの中なかに蝶ちょうが一いち羽はねひらめいてゐた。
彼かれはほんの一瞬いっしゅん間ま、乾いかわいた彼かれの唇くちびるの上うえへこの蝶ちょうの翅はねの触れるふれるのを感じかんじた。
が、彼かれの唇くちびるの上うえへいつか捺なつつて行つおこなつた翅はねの粉こなだけは数すう年ねん後あとにもまだきらめいてゐた。
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