或阿呆の一生

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二十四 出産

第 24 章
彼かれは襖ふすま側がわに佇んたたずんだまま、白いしろい手術しゅじゅつ着きを着きた産婆さんばが一人ひとり、赤児あかごを洗あらいふのを見下しみくだしてゐた。
赤児あかごは石鹸せっけんの目めにしみる度どにいぢらしい顰めしかめ顔かおを繰り返しくりかえした。
のみならず高いたかい声こえに啼きなきつづけた。
彼かれは何なんか鼠ねずみの仔こに近いちかい赤児あかごの匂においを感じかんじながら、しみじみかう思はおもうはずにはゐられなかつた。
――「何なんの為ためにこいつも生まれうまれて来きたのだらう? この娑婆しゃば苦くの充ち満ちみちみちた世界せかいへ。――何なんの為ために又またこいつも己おのれのやうなものを父ちちにする運命うんめいを荷につたのだらう?」 しかもそれは彼かれの妻つまが最初さいしょに出産しゅっさんした男の子おとこのこだつた。
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