行人

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自分じぶんとおるその翌日よくじつあさ和歌山わかやま向けむけ立つたつはずなっ
どうせいったんここ引返しひきかえしなけれならないから岡田おかだきんその好いよい思っおもっ性急せいきゅう自分じぶん紙入かみいれそのまま懐中かいちゅういるからすでにいやだっ
岡田おかだそのばんれい通りとおり宿屋やどやはなし来るくるだろう想像そうぞう
からそのおりそっと返しかえしおこう自分じぶんはらなかきめ
あにから上っのぼっ
おび締めしめ浴衣ゆかた羽織るはおるようひっかけままずっと欄干らんかんところまで行っいっそこ濡手ぬれてぬぐえ懸けかけ
待遠まちどおお母さんおははさんどうです自分じぶんはは促がしうながし
まあ這入りはいりお前おまえから云っいっははあにくびむねところ眺めながめ大変たいへん好いよい血色けっしょくなりそれ少しすこしにく付いついようじゃない賞めほめ
あに性来しょうらいやせっぽあっ
たくそれみんな神経しんけいせいもう少しすこし肥らふとらなくっちゃ駄目だめ云い合っいいあっ
そのうちはは最ももっとも揉んもん
当人とうにん自身じしん痩せやせいるなん刑罰けいばつよう忌み恐れいみおそれ
それちっとも肥れふとれなかっ
自分じぶんはは言葉ことば聞きききながらこの苦しいくるしい愛嬌あいきょう慰藉いしゃいちわがまえ捧げささげなけれならない彼女かのじょ心事しんじ気の毒きのどく思っおもっ
あに比べるくらべる遥かはるか頑丈がんじょう体躯たいく起しおこしながらじゃさきはは挨拶あいさつした降りふり
風呂場ふろばとなり小さいちいさい座敷ざしきちょいと覗くのぞくねーいままげできところ合せ鏡あわせかがみびんたぼ撫でなで
もう済んすんですええどこいらっしゃる這入ろうはいろう思っおもっさき失礼しつれいござんさあどうぞ 自分じぶん入りいりながらねー今日きょう限っかぎっなんまた丸髷まるまげなんて仰山ぎょうさんあたま結うゆうだろう思っおもっ
大きなおおきなこえ出しだし姉さんあねさん姉さんあねさん湯壺ゆつぼなかから呼んよん
なにいう返事へんじ廊下ろうか出口でぐち聞こえきこえ
御苦労ごくろうさまこの暑いあつい自分じぶん云っいっ
なぜなぜって兄さんあにさん好みこのみですそのでこあたま知らしらない ねー廊下ろうか伝いつたい梯子段はしごだん上るのぼる草履ぞうりおとはっきり聞こえきこえ
廊下ろうかまえ中庭なかにわ八つ手やつでかぶ見えみえ
自分じぶんその暗いくらいにわまえ眺めながめ番頭ばんとう背中せなか流しながし貰っもらっ
する入口いりぐちほうから縁側えんがわ沿っそっまた活溌かっぱつ足音あしおと聞こえきこえ
そう詰襟つめえり白いしろい洋服ようふく岡田おかだ自分じぶんまえ通っとおっ
自分じぶん思わおもわおいきみきみ呼んよん
いま暗いくらいちっともつかなかっ岡田おかだ一足いっそく後戻りあともどり風呂ふろ覗き込みのぞきこみながら挨拶あいさつ
あなたはなしある自分じぶん突然とつぜん云っいっ
はなし なんですまあ入んはいんなさい 岡田おかだ冗談じょうだんじゃない云ういうかお
けんませ 自分じぶんいいえ答えるこたえる今度こんどみなさん聞いきい
自分じぶんまたみんなますいう不思議ふしぎそうじゃ今日きょうどこ行かいかなかっです聞いきい
行っいっもう帰っかえっですじつぼくいま会社かいしゃから帰りがけかえりがけですどう暑いあついじゃあありませとにかくちょっと伺候しこうますから失礼しつれい 岡田おかだこう云い捨ていいすてなりとうとう自分じぶん用事ようじ聞かきかかい上っのぼっ行っいっしまっ
自分じぶんしばらく風呂ふろから
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