行人

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それ夕方ゆうがた比較的ひかくてき長くながく続くつづくなつことあっ
二人ふたり歩いあるいいるおかうえことさら明るくあかるく見えみえ
けれど遠くとおくあるたていろそら包まつつまだんだん黒ずんくろずん行くいくつれそらいろ移さうつさ変っかわっ行っいっ
自分じぶん名残なごりひかり岡田おかだかお
きみ東京とうきょうよりよほどかいなっようです血色けっしょく大変たいへん好いよい結構けっこう 岡田おかだええまあお蔭さまおかげさま云っいっよう瞹眛挨拶あいさつその挨拶あいさつうち一種いっしゅ嬉しうれしそう調子ちょうしあっ
もう晩飯ばんめし用意よういできから帰ろうかえろうじゃない云っいっ二人ふたり帰路きろつい自分じぶん突然とつぜん岡田おかだきみけんさん大変たいへんなか好いよいようですいっ
自分じぶん真面目まじめつもりだっけれど岡田おかだそれ冷笑れいしょうよう聞えきこえ見えみえかれただ笑うわらうだけなん答えこたえなかっ
けれどべつ否みいなみなかっ
しばらくからかれ今までいままでかい調子ちょうしきゅう失っうしなっ
そうなん秘密ひみつ打ち明けるうちあけるよう具合ぐあいこえ落しおとし
それあたかも独言どくげんいうよう足元あしもと見つめみつめながらこれあいついっしょなっからかれこれもう五六ごろくねん近くちかくなるどう子供こどもできないどういうものそれ気がかりきがかり云っいっ
自分じぶんなん答えこたえなかっ
自分じぶん子供こども生ますうますため女房にょうぼう貰うもらうひと天下てんか一人ひとりあるはずないかねてから思っおもっ
しかし女房にょうぼう貰っもらっからあと子供こども欲しくほしくなるものどうそこなる自分じぶん判断はんだんつかなかっ
結婚けっこんする子供こども欲しくほしくなるものです聞いきい
なに子供こども可愛いかわいいどうまだぼく分りわかりませ何しろなにしろつまたるもの子供こども生まうまなくっちゃまるで一人前いちにんまえ資格しかくないよう 岡田おかだ単にたんにわが女房にょうぼう世間せけんなみするため子供こども欲するほっするあっ
結婚けっこんたい子供こどもできる怖いこわいからまあもう少しすこしさき延そうのべそういう苦しいくるしい世の中よのなかです自分じぶんかれ云っいっやりたかっ
する岡田おかだそれ二人ふたりぎりじゃ淋しくさびしくってまたつけ加えつけくわえ
二人ふたりぎりからなか好いよいでしょう子供こどもできる夫婦ふうふあい減るへるもんでしょう 岡田おかだ自分じぶん実際じっさい二人ふたり経験けいけん以外いがいあることさも心得こころえよう話し合っはなしあっ
たく食卓しょくたくうえ刺身さしみ吸物すいもの綺麗きれい並んならん二人ふたり待っまっ
けんさん薄化粧うすけしょう二人ふたりしゃく
時々ときどき団扇うちわ持っもっ自分じぶん扇いせんいくれ
自分じぶんそのかぜ横顔よこがお当るあたるたびけんさん白粉おしろいにおい微かかすか感じかんじ
そうそれ麦酒びーる山葵わさびこうより人間にんげんらしい好いよいにおいよう思わおもわ
岡田おかだきみいつもこうやっ晩酌ばんしゃくやるです自分じぶんけんさん聞いきい
けんさん微笑びしょうながらどう後引こういん上戸じょうご困りこまります答えこたえわざとおっとほう見やっみやっ
おっとなにあと引けるひけるほど飲まのまない云っいっそばある団扇うちわ取っとっきゅうむねあたりはたはたいわ
自分じぶんまたきゅうこっち会うあうべきはず友達ともだちこと思い及んおもいおよん
奥さんおくさん三沢みさわいうおとこからぼく宛てあて郵便ゆうびん電報でんぽうなんませでしいま散歩さんぽあとない大丈夫だいじょうぶきみぼくつまそう云ういうことちゃんと心得こころえてるからねえけん好いよいじゃありませ三沢みさわ一人ひとり二人ふたりたってなくたって二郎じろうさんそんなぼくたく入らはいらないです第一だいいちあなたあのいちけんから片づけかたづけしまわなくっちゃならない義務ぎむあるでしょう 岡田おかだこう云っいっ自分じぶん洋盃こっぷ麦酒びーるゴボゴボごぼごぼ注いそそい
もうよほど酔っよいっ
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