行人

37/40

37
日曜にちよう思い切っおもいきっ寝坊ねぼうするくせつい自分じぶんつぎあさだけ割合わりあい早くはやく起きおき
めし済ましすまし新聞しんぶん読むよむその新聞しんぶん汽車きしゃ待ち合せるまちあわせる買っかっせわしなく通すとおすようなん見るみるところないほどつまらなく感ぜかんぜられ
自分じぶんすぐ新聞しんぶん棄てすて
しかし五六ごろくぶん経たへたないうちまたそれ取り上げとりあげ
自分じぶん煙草たばこ吸っすったり眼鏡めがねくもり丁寧ていねい拭っぬぐったりいろいろ所作しょさちち来るくる待ち受けまちうけ
ちち容易よういなかっ
自分じぶんちち早起はやきよく承知しょうち
かれ性急せいきゅう子供こどもうちから善くよく馴らさならさ
落ちつかおちつかない自分じぶん電話でんわかけどうこっちからちち都合つごう聞いきい見ようみよう思っおもっ
はは狎れなれ抜いぬい自分じぶんつねからちち憚っはばかっ
けれど本当ほんとうそこ割っわりっ見るみる柔和にゅうわしいははほういらち酷しいきびしいちちよりかえって怖かっこわかっ
自分じぶんちち怒らおこらたり小言こごと云わいわたりする恐縮きょうしゅくながらやっぱりおとこおとこはらなか思うおもうことたびたびあっ
けれどもこ場合ばあいいつも違っちがっ
いくらちちそう容易くたやすくこう括るくくるわけ行かいかなかっ
電話でんわかけよう自分じぶんまたかけとくしまっ
ちちとうとうじゅうころなっやっ
羽織はおりはかま少しすこしきまり過ぎすぎ服装ふくそう顔つきかおつき存外ぞんがい穏かおだやかあっ
小さいちいさいからかれ手元てもと育っそだっ自分じぶんことあるかないかれ顔色かおいろからすぐ判断はんだんするこう積んつん
もっと早くはやくいでだろう思っおもっ先刻せんこくから待っまっましおおかたゆかなか待っまっだろう早いはやいいくら早くはやくって驚かおどろきかない御前ごぜん気の毒きのどくからわざと遅くおそく出かけでかけ ちち自分じぶん汲んくん出しだしちゃ飲むのむようようくちところ持っもっ行っいっむろなかじろじろ見廻しみまわし
むろつくえ本箱ほんばこ火鉢ひばちあるだけあっ
好いよいむろ ちち自分じぶんとおる対したいしよくこんな愛嬌あいきょう云ういうおとこあっ
かれ長年ながねん社交しゃこうため用いもちい慣れなれ言葉ことば遠慮えんりょない家庭かていまでいつ這入りはいり込んこん
それほど枯れかれ御世辞ごせじからそれ自分じぶんほか御早うおはようぐらいしか響かひびきかなかっ
かれさんさしゆか覗いのぞいそこ掛けかけはばもの眺めながめ出しだし
ちょうど好いよい そのじく特にとくにここ床の間とこのま飾るかざるため自分じぶんちちから借りかり小形おがた半切はんせつあっ
かれこれなら持っもっ行っいっ好いよい投げ出しなげだしくれだけあっ自分じぶんちょうど好くよくなんないへんものあっ
自分じぶん苦笑くしょうそれ眺めながめ
そこ薄墨うすずみぼう一本いちぽん筋違すじかい書いかいあっ
そのうえこのぼうひとり動かうごかさわれ動くうごくさんあっ
要するようするともともかたつかないつまらないものあっ
御前ごぜん笑うわらうこれ渋いしぶいもの立派りっぱちゃけんなるからだれでしっけ書き手かきてそれ分らわからないいずれ大徳だいとくてらなんそうそう ちちそれ懸物かけもの講釈こうしゃく切り上げようきりあげようなかっ
大徳だいとくてらどう黄檗おうばくどう自分じぶんまるで興味きょうみないこと説明せつめい聞かきか
しまいこのぼう意味いみ解るわかるなど云っいっ自分じぶん悩まなやま
37/40