彼岸過迄

43/58

43
からぼくははできるだけ大事だいじなけれすまない
実際じっさい同じおなじみなもといんかえってぼくわがままいる
ぼく去年きょねん学校がっこう卒業そつぎょうから今日きょうまでまだ就職しゅうしょくいう問題もんだいついただ一日いちにちあたま使っつかっことない
成績せいせきむしろ好いよいほうあっ
席次せきじ目安めやすひと採るとるいま習慣しゅうかん利用りようしよう思えおもえ随分ずいぶん友達ともだち羨ましうらやましがらせる位置いち坐り込むすわりこむ機会きかいないなかっ
現にげんに一度いちどある方面ほうめんから人選じんせん依託いたく受けうけぼう教授きょうじゅ呼ばよば意向いこう聞かきか記憶きおくさえ有っあっいる
それぼく動かうごかなかっ
固よりもとより自慢じまんこう云ういうはなしするない
真底しんそこ打ち明けれうちあけれむしろ自慢じまん反対はんたい全くまったく信念しんねん欠乏けつぼうから引込みひっこみ思案しあんから不愉快ふゆかいある
あさからばんまで気骨きぼね折っおっ世の中よのなか持て囃さもてはやさところどこどういう横着おうちゃく無論むろん断わることわるからつけ纏っまとっ
ぼく時めくときめくため生れうまれおとこない思うおもう
法律ほうりつなど修めおさめない植物学しょくぶつがく天文学てんもんがくやったらまだせい合っあっ仕事しごとてんから授かるさずかる知れしれない思うおもう
ぼく世間せけん対したいしはなはだ弱いよわいくせ自分じぶん対したいし大変たいへん辛抱しんぼう好いよいおとこからそう思うおもうある
こういうぼくわがままわがままなり通しとおしくれるもの云ういうまでなくちち遺しのこし行っいっわずかばかり財産ざいさんある
もしこの財産ざいさんなかったらぼくどんな苦しいくるしいおもう法学ほうがく肩書かたがき利用りよう世間せけんいくさかわなけれならない考えるかんがえるぼく死んしんちち対したいしあらためため感謝かんしゃねん捧げささげたくなる同時どうじ自分じぶんわがままこの財産ざいさんためやっと存在そんざい許さゆるさいるからよほどこし坐らすわらないあさはかものない推断すいだんする
そうその犠牲ぎせいいるはは一層いっそう気の毒きのどくなる
ははむかし堅気かたぎ教育きょういく受けうけ婦人ふじんつね家名かめい揚げるあげるたるものだいいちつとむいうよう考えかんがえなんよりさき抱いいだいいる
しかし彼女かのじょ家名かめい揚げるあげるいう名誉めいよ意味いみ財産ざいさん意味いみ権力けんりょく意味いみまた徳望とくぼう意味いみそこ行くいく全くまったくなん分別ぶんべつない
ただ漠然ばくぜんいちあたまうえ落ちおち来れこれすべてそのほかあと追っおっ門前もんぜん輻湊ふくそうするぐらい思っおもっいる
しかしぼくそういう問題もんだいつい何事なにごとはは説明せつめいやる勇気ゆうきない
説明せつめい聞かきかせるまずぼく見識けんしきもっとも認めみとめ家名かめい揚げあげほううえないぼくその資格しかくできないからある
ぼくいかなる意味いみおい家名かめい揚げあげ得るうるおとこない
ただ汚さきたなさないだけ見識けんしきあたま入れいれおくばかりある
そうその見識けんしきはは見せみせ喜こんよろこん貰えるもらえるどころ彼女かのじょまるでかけ離れかけはなれえんないものからはは心細いこころぼそいだろう
ぼく淋しいさびしい
ぼくははかける心配しんぱいすうあるうちだいいち挙げあげなけれならないいま話しはなし通りとおりぼく欠点けってんある
しかしこの欠点けってん矯めためはは不足ふそくなく暮らしくらし行かいかれるほどははぼく愛しあいしくれるからただすまない思うおもうこころ失なわうしなわこのまま押せおせ押せおせないことないこのわがままよりもっと鋭どいするどい失望しつぼうはは与えあたえそうぼく私かわたくしかむね痛めいためいる結婚けっこん問題もんだいある
結婚けっこん問題もんだい云ういうよりぼく千代子ちよこ取り巻くとりまく周囲しゅうい事情じじょう云っいっほう適当てきとう知れしれない
それ説明せつめいするはなし順序じゅんじょまず千代子ちよこ生れうまれない当時とうじぼる必要ひつようある
そのころ田口たぐちけっしていまほどはば資産家しさんかなかっ
ただ将来しょうらい見込みこみあるおとこから云ういうちちははいもうと当るあたるあの叔母おばよめやるよう周旋しゅうせんある
田口たぐち固よりもとよりぼくちち先輩せんぱい仰いおっしゃい
なにつけ相談そうだんたり世話せわなっ
両家りょうけ新らしくあたらしく成立せいりつこの親しいしたしい関係かんけいつきとも加速度かそくどもっ円満えんまん進行しんこうつつあるさい千代子ちよこ生れうまれ
そのぼくははどう思っおもっもの大きくおおきくなったらこのくらよめくれまい田口たぐち夫婦ふうふ頼んたのんそうある
はは語るかたるところよるかれそのおり快よくこころよくはは頼みたのみ承諾しょうだく云ういう
固よりもとよりあとからひゃくだい生まれるうまれる吾一ごいちいう男の子おとこのこできる千代子ちよこやろうすれどこやられるきっとぼくやらなけれならないほど確かたしかはは受合っうけあっどうそこぼく知らしらない
43/58