彼岸過迄

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約束やくそく音信おんしん至る所いたるところからあっ
勘定かんじょうする大抵たいていいちほんぐらいわりなっいる
その代りかわり多くおおく旅先たびさき端書はしがき二三にさんこう文句もんく書き込んかきこん簡略かんりゃくもの過ぎすぎなかっ
ぼくその端書はしがき着くつくたびまず安心あんしんいう顔つきかおつきつまからよく笑わわらわ
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端書はしがき満足まんぞくぼくかれ封筒ふうとういり書翰しょかん接しせっし出しだしさらにまゆ開いひらい
いうぼく恐れおそれ抱いいだいかれ陰欝いんうついろ巻紙まきがみ染めそめ痕迹こんせきそのどこ見出せみだせなかっからある
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ここ二三にさんつう取っとっある
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なに若いわかいおんな
それ知らしらない
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くら若いわかいおとこことから求めもとめそう云ういうところ近づいちかづい知れしれない
しかしここ書いかいある不思議ふしぎばあさんれいある
ぼくこのへんひと言葉ことば聞くきく微かかすかよい任せまかせよう気分きぶんなりますあるひとべたついいや云いいいますぼくまるで反対はんたいですいや東京とうきょう言葉ことばですむやみ角度かくど多いおおい金米糖こんぺいとうよう調子ちょうし得意とくいなっ出しだしますそう聴手ききてこころ粗暴そぼう威張りいばりますぼく昨日きのう京都きょうとから大阪おおさかまし今日きょう朝日新聞あさひしんぶんいる友達ともだち尋ねたずねたらその友人ゆうじん箕面みのおいう紅葉こうよう名所めいしょ案内あんないくれまし時節じせつ時節じせつですから紅葉こうよう無論むろんられませでしけいかわあっやまあっやま行き当りいきあたりたきあっ大変たいへん好いよいところでし友人ゆうじんぼく休まやすませるためしゃ倶楽部くらぶいうかいけん建物たてものなか案内あんないましそこ這入っはいっ見るみるはば広いひろい長いながい土間どまたていえ間口まぐち貫ぬいつらぬいましそうそれことごとくしきかわら敷きつめしきつめられいる模様もようなん支那しなてら行っいっよう沈んしずん心持こころもちぼく与えあたえましこのいえなんだれ始めはじめ別荘べっそう拵えこしらえ朝日新聞あさひしんぶん買い取っかいとっ倶楽部くらぶよう聞きききましよし別荘べっそうせよかわら畳んたたん出来できいるこの広々ひろびろ土間どまなんためでしょうぼくあまりみょうから友人ゆうじん尋ねたずねましところ友人ゆうじん知らしら云いいいましもっともこれどう構わかまわないことですただ叔父おじさんこう云ういうこと明らかあきらかからあるいは知っしっいで知れしれない思っおもっちょっと蛇足だそく書き添えかきそえだけですぼく報知ほうちたいじつこの広いひろい土間どまなかっです土間どまうえ下りくだりばあさん問題もんだいだっですばあさん二人ふたりまし一人ひとり立ったっ一人ひとり椅子いすこしかけましただし両方りょうほうともくりくり坊主ぼうずですその立ったっいるほうぼく這入るはいるいな友人ゆうじんかお挨拶あいさつましそうおや御免ごめんやすいま八十六はちじゅうろくばあさんあたま剃っそっとるところだすってばあさんじっとなはれもう少しすこしだけよう剃っそったけれいちほんありゃってなん恐ろしいおそろしいことありゃへん云いいいまし
椅子いすこしかけばあさんあたま撫でなで大きにおおきにれい述べのべまし
友人ゆうじんぼく顧みかえりみ野趣やしゅある笑いわらいまし
ぼく笑いわらいまし
ただ笑っわらっだけありませ
ひゃくねんむかしひと生れうまれよう暢気のんき心持こころもちまし
ぼくこういう心持こころもち土産みやげ東京とうきょう持っもっ帰りかえりたい思いおもいます ぼくくらこういう心持こころもちあね土産みやげ持っもっくれれいい思っおもっ
十一じゅういち
つぎ明石あかしからものまえ比べるくらべる多少たしょう複雑ふくざつだけくら性格せいかくより鮮やかあざやか現わしあらわしいる
今夜こんやここましつきにわ明らかあきらかですぼく部屋へやかげなっかえって暗いくらい心持こころもちますめし食っしょくっ煙草たばこ呑んのんうみほう眺めながめいるうみつい庭先にわさきあるですさざなみさえ打たうたない静かしずかばんから河縁かわえん池の端いけのはたともかたつかないなぎさ景色けしきですそこ涼みすずみふねいちそう流れながれましそのふねかたちよしみよるよく分らわからなかっけれどはば広いひろいそこ平たいひらたいどううみ浮ぶうかぶもの思えおもえない穏やかおだやかかたち具えそなえまし屋根やね確かたしかあっよう覚えおぼえますそののきから染めそめ提灯ちょうちんいくつぶら下がっぶらさがっまし薄いうすいひかりおく無論むろんひと坐っすわっいるようでし三味線しゃみせんおと聞こえきこえましけれどそうからだいかに落ちついおちつい滑るすべるよう楽しんたのしんぼくまえ流れながれ行きいきましぼく静かしずかそのかげ見送っみおくっ祖父そふさん若いわかい時分じぶんはなしいう思い出しおもいだしまし叔父おじさん固よりもとより存じぞんじでしょう祖父そふさんむかし通人つうじん月見つきみ舟遊ふなあそび実際じっさいやっはなしぼくははから二三にさん聞かさきかさことあります屋根船やねぶね綾瀬あやせかわまで漕ぎこぎ上せのぼせ静かしずかつき静かしずかなみ映りうつり合うあう真中まなか立ったっ用意よういある銀扇ぎんせん開いひらいままよるひかり遠くとおく投げるなげる云ういうじゃありませおうぎようぐるぐる廻っまわっ地紙じがみ塗っぬっ銀泥ぎんでいきらきらながらみず落ちるおちる景色けしき定めてさだめてみごとだろう思いおもいますそれただいちほんならですふねものそうがかりひらひらするひかり投げなげ競うきそう光景こうけい想像そうぞう凄艶せいえんです祖父そふさん銅壺どうこなかさけいっぱい入れいれそのさけ徳利とっくりかんあとことごとく棄てすてさしほど豪奢ごうしゃひと云ういうから銀扇ぎんせんひゃくほんぐらい一度いちどみず流しながし平気へいきでしょうそう云えいえ遺伝いでんなん叔父おじさん貧乏びんぼうわり云っいっ失礼しつれいですどこ贅沢ぜいたくところあるようですあんな内気うちきははみょう陽気ようきこと好きすき方面ほうめんむかしから見えみえましただぼくだけこういうまたあの問題もんだい持ち出しもちだし早合点はやがてんなさる知れしれませぼくもうあのことつい叔父おじさん心配しんぱいなさるほど屈托くったくないつもりですから安心あんしん下さいくださいただぼくだけ断ることわるけっして苦いにがい意味いみ云ういうありませぼくこのてんおい叔父おじさんははとも生れつきうまれつき違っちがっいる申しもうしたいですぼく比較的ひかくてきらく育っそだっ物質的ぶっしつてき幸福こうふくから贅沢ぜいたく知らしら贅沢ぜいたく平気へいきまし着物きものなどはは注意ちゅうい人前ひとまえ恥かしくはずかしくないようもの着けつけながらこれ当然とうぜん澄ましすましましけれどそれ永くながく習慣しゅうかん養わやしなわ結果けっか自分じぶん知らしらない不明ふめいから出るでる一度いちどそこつくきゅう不安ふあんなります着物きもの食事しょくじまあどういいぼくこのある富豪ふごうむやみきん使うつかう様子ようす聞いきい恐ろしくおそろしくなっことありますそのおとこ芸者げいしゃ幇間ほうかん大勢おおぜい集めあつめかばんなかから出しだしさつたばそのまえずたずた裂いさいそれ御祝儀ごしゅうぎ称えとなえみんなやるそうですそれから立派りっぱ着物きものまま這入っはいっあと三助さんすけくれるそうですかれ乱行らんぎょうまだたくさんありましいずれてん恐れおそれない暴慢ぼうまん極まるきわまるもののみでしぼくそのはなし聞いきい無論むろんかれ悪みにくみましけれど気概きがい乏しいとぼしいぼく悪むにくむよりむしろ恐れおそれましぼくからかれ所行しょぎょう見るみる強盗ごうとう白刃はくじん抜身ぬきみたたみ突き立てつきたてて良民りょうみん脅迫きょうはくいる同じおなじよう感じかんじなるですぼくじつてん人道じんどうもしくは神仏しんぶつ対したいし申し訳もうしわけないいう真正しんせい宗教的しゅうきょうてき意味いみおい恐れおそれですぼくこれほど臆病おくびょう人間にんげんです驕奢きょうしゃ近づかちかづかないさきから驕奢きょうしゃ絶頂ぜっちょう達したっし躍り狂うおどりくるうひと一転いってんばけあと想像そうぞう怖くこわくたまらないありますぼくこんなこと考えかんがえ静かしずかなみうえ流れながれ行くいく涼みすずみふね見送りみおくりながらこのくらい程度ていど人間にんげんちょうど手頃てごろだろう思いおもいましぼく叔父おじさんから注意ちゅういようだんだん浮気うわきなっ行きいきます賞めほめ下さいくださいつき差すさすかいきゃく神戸こうべから遊びあそびぼくいや東京とうきょうばかり使っつかっ折々おりおり詩吟しぎんなどやりますそのなか艶めかしいなまめかしいおんなこえ交っかっまし二三にさん十分じゅうふんまえからきゅうおとなしくなりまし下女げじょ聞いきいたらもう神戸こうべ帰っかえっそうですよるだいぶ更けふけましからぼく休みやすみます
十二じゅうに
昨夕さくゆう手紙てがみ書きかきまし今日きょうまた今朝けさ以来いらい出来事できごと報知ほうちますこう続けつづけ叔父おじさんばかり手紙てがみ上げあげたら叔父おじさんきっと皮肉ひにく薄笑いうすわらいあいつどこぶんやるところないものからとくあねおのれ対したいしだけ時間じかん費やしついやし音信おんしん怠らおこたらないはらなか云ういうでしょうぼくふで執りとりながらちょっとそう云ういう考えかんがえ起しおこしまししかしぼくもしそんな愛人あいじんできたら叔父おじさんたといぼくから手紙てがみ貰わもらわない喜こんよろこん下さるくださるでしょうぼく叔父おじさん音信おんしん怠っおこたっそのほう幸福こうふく思いおもいますじつ今朝けさ起きおきかい上っのぼっうみ見下しみくだしいるそういう幸福こうふく二人ふたり連がつながいそ通いかよい西にしほう行きいきましこれことよるぼく同じおなじ宿やど泊っとまっいる御客ごきゃく知れしれませおんなクリームくりーむいろ洋傘ようがさ翳しかざし素足すあし着物きものすそ少しすこし捲りめくりながら浅いあさいなみなかおとこ並んならん行くいく後姿うしろすがたぼく羨ましうらやましそう眺めながめですなみ非常ひじょう澄んすんいるから高いたかいところから見下すみくだすりく近いちかいあたりなど照るてる空気くうきなか変りかわりなくなん透いすい見えみえます泳いえいいいる海月かいげつさえはんせつ見えみえます宿やどきゃく二人ふたり泳ぎおよぎ廻っまわっますかれ水中すいちゅうやる所作しょさ一挙一動いっきょいちどうことごとく取るとるよう見えるみえるげい水泳すいえい価値かちだいぶ下落げらくするようです午前ごぜんなな時半じはん今度こんど西洋せいようひと一人ひとりみず浸っひたっますあとから若いわかいおんなましそのおんななみなか立ったっかい残っのこっいるもう一人ひとり西洋せいようひと呼びよびますユーゆーカムかむヒヤひや云っいっ英語えいご使いつかいます
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結末けつまつ
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